群(むれ)として捉える
こんにちは。
基礎科講師の村です。

今回は昨年度の学年末実技模試にて特に評価の高かった作品をご紹介します。作品にはコメントをつけているので、ぜひ読んでみてください。評価したポイントなど、なるべく分かりやすくお伝えできればと思います。

あらためて、この課題のモチーフ内容を振り返ってみましょう。

週4日クラス実技模試課題
出題:セットされたモチーフを描きなさい。
モチーフ:麻袋、ブロック、中華鍋、ワインビン、大量の玉ねぎ
週4日クラスの実技模試の静物モチーフ
高2生の鉛筆デッサン
第1位デザイン工芸基礎コースの生徒の作品
トータルのバランスが大変整っている作品です。よく画面全体を見渡しながら制作していることが伺えます。(木炭紙サイズの作品はこのモチーフでなくても全体を把握するのが大変なんです…)自分にとって最も近くに置いてあるモチーフが何であるか、遠いモチーフは何であるかを自覚していますし、表現として強調して見せたいところも意識的に描かれているように思います。工夫が見えるのが、中華鍋の中に入っている玉ねぎの山を群(むれ)として捉えて表現しているところ。一つ一つが主張するのではなく、鍋と一体となって見えているので、場が煩雑に見えず、すっきり整理されていて気持ちがいいです。鉛筆の調子は少々ぼんやりと曇りがち。今後はすっきりと空気が晴れやかな印象で描けるように研究したいところです。

高2生の木炭デッサン
第2位油画基礎コースの生徒の作品
モチーフの一部を大胆にトリミングし、台上の空間が奥へ奥へと広がっていく様子を気持ちよく見せてくれています。大きな麻袋が台上に敷いてあり、その上に玉ねぎや瓶が転々と存在していますが、決して玉ねぎを同じように描いてしまうのではなく、コロンと転がる向きがそれぞれ違うことを分かるようにしています。置いてある場所によって光の当たり方も変えているようです。一方、中華鍋とワインビンは、両者とも黒い色をしていてかつ光沢もあるので、お互いが喧嘩しやすい難しいポイント。どちらがどのように遠慮すれば場が自然に見えるかを考えてみましょう。

高2生の鉛筆デッサン
第3位デザイン工芸基礎コースの生徒の作品
グイグイと描き込んでいて力強さを感じる作品です。麻袋の網目を細部まで描いていたり、コンクリートブロックの石の粒感まで描いているので、手で触ったときにざっくりしていたり、ザラザラしている素材であることが感覚的にこちらに伝わってきます。構図的にも、すべてのものがきっちりと画面に収まっており、隙がないレイアウトです。一方で、この絵に欲しいのはその「隙」であり、伸びやかな空間です。中央に集中的にものを集めたモチーフではありますが、同時にその中にぽっかりと空いた間を感じさせたいところです。

高2生の木炭デッサン
第4位油画基礎コースの生徒の作品
モチーフの中央ではなく、台の縁やそこに広がるスペースに注目し、思い切りよくトリミングした作品です。この作品の主眼は、物をいかに細かいところまで描写するかというところにあるのではなく、物以外のところにある空間や、そこに降り注ぐ光や、点々と置かれた玉ねぎの配置から感じるリズムにあるように思います。また、何てことのない玉ねぎも、特別な場に置かれた素敵な物のように感じてしまうのは、台(床)自体の描写がしっかりとされているからだと思います。今後は描写の密度をさらに高められると、レベルが一つ上がると思います。

講評会の様子
講評会の様子