絵画専攻の入試内容と1年間のスケジュール
知っておきたい美大入試の基礎知識をお届けする「美大入試の基本」Blog。今回のテーマは「絵画専攻の入試:入試編」です。
今回のポイントは2つ
一つ目 「入試の内容や配点は?」
二つ目 「現役合格の為の1年間のスケジュール」です。
この2つについて、ご説明します。
入試の内容や配点は?
入試の配点
まず入試の配点や内容についてです。
入試は大学・方式によって違いがありますが、タマ美やムサ美の一般選抜の一般方式をオーソドックスな例としてあげてみます。試験は実技試験2科目(300点)と学科試験2科目(200点)の合計500点満点で審査されます。
この他には実技試験400点学科100点という試験や、実技試験のみで判定されるなど、絵画専攻は、デザイン専攻と比較すると、実技重視の傾向があるということでしょう。
入試の内容
では、絵画専攻で出題される実技2科目の内容についてもう少し詳しくご説明しましょう。ほとんどの大学の絵画系専攻では実技はデッサンと色彩の試験があります。デッサンの描画材は油画科では木炭が多いのですが、大学によっては鉛筆であったり、どちらか選べる場合もあります。日本画科は鉛筆です。色彩の試験は油画科では油彩、日本画科では水彩の試験です。デッサンと色彩とでは、大学が審査するポイントは簡単に言えばこのようになります。デッサンは基礎力色彩は表現力です。もちろん、そう簡単に割り切れるわけではありません。デッサンと色彩は単独でそれぞれ審査されるのではなく、同時に並べて審査している大学が多く、お互いの関係が評価に影響を与えることもあると思われます。例えば色彩を見ると、絵の具や色についての感性に優れているけれど、基礎力はあるのかな、とデッサンで確認するような評価の仕方です。
デッサン
デッサンの内容をもう少し具体的に見ていきましょう。左に絵は油画科の人物木炭デッサンです。問題文は「人物を描きなさい」です。対象をしっかり見て些細な表情も見逃さない観察力や、画面全体を意識しながら細部を描き込むことができる描写力等の基礎的な力を問う出題です。
真ん中の作品は日本画科の鉛筆デッサンです。モチーフを描きなさいという問題です。形の正確さや明暗による立体表現、質感表現などの客観的な空間描写力に重点を置いて判定されます。これも同様に、基礎的な力が問われています。
一番左は油画科のデッサン作品です。「都市と私」というテーマで描きなさい。という出題です。目の前の対象を描かせるような課題が多い中、このように、デッサン課題にも、言葉でテーマが与えられ、想像で描かせる場合があります。デッサンにおいても自由に空間を設定し描く発想力が求められているということでしょう。
色彩
色彩の課題はデッサンと比べると、自由な表現力を問う課題が多く出題される傾向にあります。ときには何もモチーフは与えず、抽象的な言葉だけがあたえられ、そこからどれだけイメージを膨らませ、自分の視点で絵を描くことができるかが問われています。また、色調、絵の肌合い、空間の設定など、ある特定の表現スタイルが好まれるのではなく、幅広く多様な表現を評価していくところが絵画専攻の色彩課題の特徴と言えるでしょう。
1年間のスケジュール
さて、ふたつ目は現役合格の為の1年間のスケジュールについてです。
それでは1年間の入試までの大きな流れを見てみましょう。
まず、4月から夏までは基礎課題で基本的な造形力をつけていきます。観察力、物を正確に捉える力や描写力をつけていきます。少し時間をかけたカリキュラムで、密度のある表現というのがどのようなものなのか、身体で覚えていくように演習を繰り返します。色彩に関しては、絵具の基本的な使い方と知識をつけることが目標です。
夏期講習会は、現役生にとっては集中的に経験値を増やし、大きく伸びるチャンスでしょう。たくさんの制作をこなす事が重要です。
秋からは表現研究ということで応用課題を行います。興味のある作家の作品を模写したり、古典技法の研究などを通して絵のプロセスを学び、自分の表現に取り入れます。少しずつ自分の個性を生かした表現が出来るようになることが目標です。
12月頃から入試までは、試験本番に近い制作時間と課題内容です。今まで学んできたことを入試本番で出していく実戦的な力をつけることを目標とします。
以上が一般選抜を受験する人の大きな流れですが、総合型選抜、学校推薦型選抜を受験する予定の人は、これにプラスしてポートフォリオの作成を進めていく必要があるでしょう。入試直前には面接やプレゼンテーションの練習も行います。特に総合型選抜受験者は、早いところでは、9月にはもう入試となりますから出遅れないように注意が必要です。また、一般選抜を受験することも想定して学科対策も手を抜かないようにしましょう。