STEP8「多摩美の推薦入試>志望理由書」

前回の最後に、「面接」のポイントはその前に提出した「志望理由書」です、とお話ししました。
実際の「面接」の場所で実は出願時に提出していた「志望理由書」が重要とは・・・。

 

あらためて、
「志望動機をお聞かせください。」と聞かれると思います。
すでに知っているはずなのに何を話せばいいんだろうという気持ちになりますが、
「志望理由書」に記述した志望動機を話すのです。重複していますが、それでいいんです。

よって、いかに”あなたの言葉”で「志望理由書」が書かれていたかが重要になります。
決して一般論を書いてはいけません。

例1
「昔から小さい頃から絵を描くことやポスターが大好きで、将来は夢のある美術やデザインの仕事がしたいと思い貴校を志望します。」
例2
「近年、デザインの役割は大きく変化しており、より包括的な視点で捉えることが必要に感じています。貴校で学ぶことで、多様な社会に新しい提案をできるような優れたデザイナーになりたいと思っています。」

このような志望理由書どうでしょう?

 

例1も例2も大筋は間違いじゃありませんが、これでは「あなた」が全く見えませんよね。
例1は、もともと絵を描くことが好きで将来は美術に関わる仕事がしたいと考えている人が美大を志すものですから、改めて記述する必要ありません。
例2は、一般論的なうえに高尚すぎて、本当に高校3年生が考えて記述しているのか疑問視されてしまうでしょう。

 

では、次の志望理由はどうでしょう。

sample 1
「父がグラフィックの仕事をしていて幼少の頃からなんとなく見ていました。大勢の大人たちが入れ替わり立ち代わり我が家に出入りし話し合いをしている姿に、当初は戸惑いを感じていましたが、大の大人が真剣に関わるその仕事に対して、高校生になる頃には父の仕事とデザインについて興味が湧き、調べてみたり考えるようになりました。」
sample 2
「高校1年生の時、通学途中の駅で見た清涼飲料水のポスターに目が止まりました。高校受験を終えた後、漠然と今後の進学進路に不安を感じていた私にとって、とても勇気を与えてくれ釘付けになりました。誰がこんなすごいものを作っているんだろう。デザインに興味を持った最初のきっかけでした。」
sample 3
「私は中学の頃からバンドをやっていて音楽に携わってきました。投稿サイトでプロのミュージシャンのMV(ミュージックビデオ)を時間を忘れるほど没頭して見ています。これまで見たMVは数え切れないほどで300を超えていると思います。最初は演奏することに興味があって見ていましたが、徐々にMV自体に引き込まれるようになりました。高2の時に友達の付き添いで訪れた御校のオープンキャンパスで見た学生の方が作られた映像作品が素晴らしく、美大ではこんな凄いことが学べるのかと衝撃を受け、その時絶対美大に行こうと決めました。」

 

どうですか?
最初の例1,2と比べると随分違うと思います。
これをそのまま志望理由書に書いていいわけではありませんが、どの記述もそれを書いた「あなた」自身を感じらませんか?

 

話を「面接」に戻しますね。
STEP7で、
”「この提出書類を書いたのは本当にこの子なのかな?」
って、あなたが先生だったら思いませんか?”
とお話ししました。

最初にあげた”例1,2”の内容の志望理由書だったら、本当かどうかと尋ねたくなります。あまりに当たり障りなく具体性に欠けるので、誰かに添削して書いてもらってる、もしくは何かのテンプレートなんじゃないか・・・?と。
(※添削してもらうこと自体は悪いことではありません。)

sampleの1、2、3はとっても具体的です。
多摩美の「志望理由書」の文字数は1000字なのでさらに具体的に記述することになりますが、その「志望理由書」をもとにもっと「あなた」を知ってみたい、こんな興味を持っている子なら本当かどうか確認したいと思います。もちろんポジティブな意味で。

あなたならどんな質問をしましか?

私なら、sample1の子には、

「お父様のお仕事がグラフィックということですが、どんなものですか?」
当初は戸惑っていたものが、興味を抱くに至ったきっかけはなんでしたか?

 

sample2の子に対しては、

その清涼飲料水のポスターはなんでしたか?
好きなデザイナーさんはいますか?

 

sample3の子は、

今まで見たMVで一番のお気に入りとその理由を聞かせてください。
大学進学後のビジョンを聞かせてください。

 

と質問してみたいです。

 

”あなたの言葉”で「志望理由書」が書かれていれば、問題なく質問に答えられるはずです。
18,19歳の子が面接に来ているので、緊張してうまく喋ることができないだろうことは大学の先生方は百も承知です。大丈夫!
だとたどしくったって、しっかり自分の言葉で伝えて来てください。

 

さて、もう一度「志望理由書」に戻ります。
文章構成や”てにをは”など、文字で相手に伝えるための工夫はもちろん必要ですが、
需要なポイントは、
”あなたのこれまでの経験と眼差し”です。

経験は人それぞれで、当然様々なケースがあります。何が正解で何が不正解かはありません。
”うちの親は別にデザイン関係の仕事をしていない”から書けないわけでもないですし、
MVを数百本見てれば書けるわけではありません。

「あなた」が何となく過ごしてきたごくごくありふれた日常生活の中で、
ものづくりの視点、資質が問われているということです。

”経験”を意味あるものにするのは、”眼差し”です。

どんなことに目を向けているのか。
そしてそれを「あなた」の言葉で記述するのが、
「志望理由書」です。

 

「志望理由書」「ポートフォリオ」「面接」。
全てを繋げて考えていくべきでしょう。
それぞれの試験科目で対応するのではなく、一貫した自己アピールを目指します。
そして、あなたのアピールポイントを明快にするために、
ここでも「過去」「現在」「未来」の考察が重要な役割を果たしていくのです。

 

 

「過去」「現在」「未来」の考察については、
STEP2「多摩美の推薦入試>ポートフォリオ制作1」をみてください。