デッサンの基礎:パース(遠近法)

鉛筆デッサンのルールを理解しよう

絵を描く上で、その対象が持っている魅力を感じ取る感覚(”軽そう”や”重そう”、”触ったら柔らかそう”や"硬そう”、”カラッとしている” ”しっとりしている”などの光の印象などなど)はとても大切です。対象を観察する眼を”耳”にして、そのモノが囁いている小さな小さな声を聞き取ってあげましょう!聞き耳を立ててね。
一方で、デッサンにはルールがあります。文章表現でいうと文法にあたる部分です。”感じ取る感覚”はあなたの受信機の感度です。”ルール”は受信機が受け取った情報を第三者に伝える方法です。ルールがしっかりしていないと、それを見た第三者は何を言おうとしているかわかりません。ですので、ルールはしっかりと学習(トレーニング)する必要があります。その学習の一つが「パース」です。

透視図法

パースとは、英語の「Perspective(パースペクティブ)」の略で、本来の意味では、「遠近法」「透視図法」「透視図」などの総称になります。日本では、主に、「遠近法」「透視図」のことを言うことが多いです。さらに、美大受験の勉強の中でパースと言われたら「遠近法」におけるものの見え方について言われていると思って良いでしょう。
指導の中で、「パースが狂ってる」、「逆パースだよ」、「オーバーパースだよ」などという言われ方をすることがあると思います。それは、ものの見え方が、自然に見えていないということを指摘されているのです。
パースへの理解がいつまでたっても曖昧な人が多いのは現実です。理屈は知らなくても感覚的に自然な遠近感を捉えられる人もいれば、それが苦手な人もいるでしょう。いずれにしても、画面のなかの形や空間の歪みを発見し、直していけるようになるためには、一度はっきりとその理屈を理解する必要があります。
でも、これだけは覚えておいてください。絵は「理屈で描く訳じゃない」ということ。むしろ、パースなどのルールは感覚を大事にして描くためのほんの少しの指標であり、自分の画面を点検するための検算の方法と捉えてください。

一点透視図法

形態の中には、円柱のように一点透視図法で表現する形態もある。また、他の立方体や直方体のような形態でも、真正面から見た場合は一点透視が原則。

二点透視図法

通常の静物表現ではニ点透視図法が最も自然な表現になる。言い方を変えると、ニ点透視図法で表現することのできる角度からモチーフをみる事が、形の理解を損なわずに自然な空間を表現しやすいということになります。

三点透視図法

スケールの大きな対象を描く時にしばしば使われる。例えば高層ビルなどの一個の形態のなかで視点の落差が大きい場合。

ブロックの形の描き方


2点透視図法を使って、静物デッサンでも頻繁に出題される、コンクリートブロックを描いてみましょう。下の図は一般的な静物などで、台上に置かれたブロックの目線と消失点を表した図です。消失点はかなり離れた位置になるので、実際に消失点を打って形を取っていくことは不可能です。
ですから、下図のような見え方を頭の中でイメージし、感覚的に捉えられるようにならなければなりません。感覚を鍛えてくれるのは経験(練習)だけですが、理屈を理解した上で経験(練習)することで、経験(練習)はより意味のあるものになるでしょう。

実線が実際に目に見えてくる線。破線は、構造を捉えられるために見るべき線になります。底面の形は見えていない裏側の形も繋げてあたり、水平な面として自然に見えているかを確認しましょう。またブロックの穴の形が正確に捉えられるかどうかもポイントです。見えていないところをしっかり捉えられえると、形の精度は格段に上ることでしょう。

視点の高さ

静物デッサンを描くにあたって、絵の中に基準をしっかりと作ることが大切です。その一つが「自分の視点の高さがどこにあるか?」ということ。立方体を例にすると、視点の高さが立方体の上面より上にある場合は当然上の面が見えます。徐々に視点を下げ上面と同じ高さになったとき、上面はほぼ一直線になります。更に更に視点を下げ立方体をほぼ真下から見上げると上面は正方形に見えます。

楕円


楕円とは、幾何学上の定義では、平面上のある2定点からの距離の和が一定となるような点の集合から作られる曲線である。ちなみに、正円は楕円の特殊な状態ということになります。
デッサンを描く場合の楕円と言うと、ビンなどの円柱状のものを斜めから見た時の上面や底面に出てくる形をさして言う場合がほとんどです。この楕円は、試験においても要求される機会がかなり多いのですが、苦手意識を持つ人も多いです。ということは、ルールを理解して、確実に捉えられるようにすれば確実にまわりに差を付けられるということです。特に立体、空間系の課題では必須です!!また、平面系の課題でも、手と絡めるものに楕円の要素があることもあるので、しっかり押さえておきましょう。

ワイン瓶の形の描き方


ワイン瓶などの工業製品は中心軸をもち、その軸に対して対称形をしています。中心軸を芯にして回転させても形の見え方が変わらないので回転体と呼んだりもします。ですから、まずは中心軸を引き、この線に直交する長軸をあたり形を捉えていくことになります。ワイン瓶の形が変化するところに楕円をとっていくと形の精度が高まります。ですので複数、楕円をとることになりますね。
また、楕円の形をしっかり取るコツとして、見えている場所だけでなく、見えていない裏側まで一緒に形を取るといいでしょう。
”Bordeaux”のラベルの文字も、楕円のルールに法ったベースとなるラインを元に描いていきます。

余談ですが、”魅力を感じ取る感覚”は、実はみなさん良い感度の受信機をそれぞれが持っているものなのです(と思います)。では誰もが良いデッサンを描けるかというと残念ながらそうではありません。何が問題かというと、”ルールを理解しトレーニングする”時に壁があるようです。まず理屈を理解すること、それを実践して描いてみること、なかなか形が合わないので直すこと。それらを繰り返していくことで、ルールを理解またデッサン力の向上が果たせます。持続的なトレーニングを積み重ねることができるかどうか。その壁を越えられるといいですね。