重量感の表現

こんにちは。
高1生・高2生科の講師の村です。

今回は、デッサンコースの週2日・週1日クラスが先日の授業で描きました、静物デッサン課題のご紹介です。記事の最後には生徒作品を4点載せています。作品についてのコメントも寄せていますので、読んでみてほしいと思います。

今回の課題

出題:「セットされた静物を描きなさい。」

静物デッサンのモチーフ。テーマ「重量感の表現」。
[モチーフ]
トイレットペーパーのロール、ビニール袋に入った砂利

この課題のテーマは「重量感の表現」です。絵の中で「軽そうだな」「重そうだな」と相手に感じてもらえるように描くことが出来るようになってほしいという狙いがあります。ですが、考えてみれば、実際に持ち上げて重さを感じたわけでもないし、スケールに載せて重量を測ったわけでもありません。モチーフの見た目から自分が想像した「これくらい重いんじゃないか…?」というイメージで描くわけです。まずはそうやって自分の身体感覚と擦り合わせる時間、つまり「観察」の過程が欠かせません。こういったことを自分から進んでやらなければ、本当に見た目だけで描いてしまうわけで、それでは表面的な情報を真似るだけになってしまうでしょう。「観察」も日々訓練です。

さて、重量感を表現するには、主に以下の2つの方法があると思います。

  1. 軽いものは白色を多く使い、重そうな物は黒色を多く使って描く。
  2. 接地点(床と物が接しているポイント)の影の特徴を描く。

1.は、人間が色に対して抱くイメージをうまく利用した方法です。ファッションや髪の毛なども、色によってイメージの違いはありますよね。例えば、黒い服は重たい印象があるし、白い服は軽い印象があります。暗い色の髪は重たそうに見え、明るい色の髪は軽そうに見えます。今回ならば、砂利の入った袋にしっかりとした黒を使い、トイレットペーパーには黒さを控えめにすると効果があります。

2.も重量感を引き出すのに役立つ方法です。物が床に置いてある際、物の底が床に多く接しているか、少ししか接していないか、つまり接地点の大きさの違いを描き分けます。今回ならば、砂利の入った袋の底はべったりと床に付いており、逆に引き出されたトイレットペーパーは床に付いたり離れたりしています。その様子を違いをつけながら描きます。

さあ、ハマ美のみんなはどうやって描いているでしょうか。ちょっと見てみましょう↓↓↓

高校2年生の静物デッサン作品①

高校2年生の作品です。袋の重さがよく伝わってくる作品ですね。袋に押さえつけられたペーパーの表現がうまいです。ロールから引き出されたペーパーが袋に近づくにつれ面の向きが変わります。立ち上がっているペーパーが寝てしまう様子をちゃんと描いていますね。袋から離れるとペーパーは浮き上がります。わかりやすいです◎

高校2年生の静物デッサン作品②

高校2年生の作品です。ペーパーが袋に押さえつけられるポイントは直には見えていないアングルなのですが、ペーパーの折り返し地点(最手前)で、袋に押さえつけられてペーパーが跳ね上がる形をしっかり描いているので、重さが想像できますね。使う色の違いもGOODです。

高校2年生の静物デッサン作品③

高校2年生の作品です。袋の中に入っている砂利の描写は若干足りないのですが、綺麗なイメージの作品です。袋の接点がペーパーによって見えにくいアングルですが、周辺のペーパーの描かれ方がはっきりしているので重さが伝わってきます。ピンと張ったところと、くたっと緩んでいるところなど、テンションの違いが描けていて、それが重量感に繋がっています。

高校2年生の静物デッサン作品④

高校2年生の作品です。ずっしりとした袋の重さを感じます。色彩の表現が実にはっきりしていて、袋に入った砂利の黒、ペーパーの白など、使う色にメリハリがあります。接地点に関していうと、画面左側にあるペーパーの接地点の影をとても繊細に描いていますね。ペーパーがすごく薄い様子が接地点の描写から伝わります。

いかがでしたでしょうか?
テーマが「重量感の表現」じゃなくても、いつも物には重さがあります。だから他の課題にもすぐに応用可能です。違いをつけて描きたい時には一つの戦術として使ってみてほしいと思います。