鉛筆デッサン:靴の細密描写

徹底的な細密描写=42.195km

基礎トレーニングの重要点は、「光の方向を設定する」、「影の形を理解する」、「形の精度を高める」でした。特に「光の方向を設定する」は、立体感を表現する際に最も効果的な方法ですので最優先事項です。絵は真っ平らな紙の上の二次元の世界。その紙の上に、あたかも物がそこに存在しているかのように立体的に表現するためには「操作」が必要です。その操作の一つが「明暗」です。これが全てのモチーフを表現する上で第一優先の共通の基礎ルールでした。

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今回の課題は、基礎トレーニングの要点をベースとしながら、「どこまで描けるか?」を問う課題です。ですので課題も”細密デッサン”で、しかも”最低でも10時間以上を費やせ”という条件がついているのです。
デッサンをマラソンに例えてみます。42.195kmを最速で2時間04分56秒(日本記録:2023年3月現在)で走りきります。すごいですね!そして、目指す42.195km地点は、細密描写(描くところがなくなるぐらい細部まで描写すること)とします。
完走して、尚且つ日本記録に迫るタイムをみなさんも受験期の2月に出せるようになっている必要があります。
はじめのうちは、2時間04分56秒のタイムを出せる人も、ましてや42.195kmを走りきれる人もいないと思います。
さて、どうしましょう?
是非是非、今の自分自身に置き換えて、どうやってその力を身に付けていったらいいか想像しながら考えてみてください

タイムはどうあれ、まずは走りきれる体力をつけることを優先する

我々はこう考えています。
タイムはどうあれ、まずは走りきれる体力をつけることを優先する
タイムを競う以前に完走できなければ意味はありませんよね。走りきれるようになってきたら、タイムを出すことを目指す。そんなふうに我々は考えて、一年間のカリキュラムを作っています。
そして、おそらく完走がしやすくなるであろう基本的な「走り方」を知るのが、最初の基礎トレーニングです。「光の方向を設定」すること、「影の形を理解」すること、「形の精度を高め」ること。
走り始めの1km地点でも終盤の42km地点でもアドバイスすると思いますので、意識しながら完走を目指してみよう!

「基本的な走り方を意識ながら、タイムは気にしなくていいから42.195km(描くところがなくなるぐらい細部まで)を走ってみよう!

参考作品1

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像
鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

今回の課題で良かった作品です。42.195kmを走りきる体力がついてきていると感じます。細部まで丁寧に観察されていて見応えのある作品です。参考になる1枚です。ここからは良いタイムを出すために、効果を考えて加筆できるといいと思います。一番有効なのは「差」を作ることです。明暗の「差」、固有色の「差」、質感の「差」、調子の質の「差」です。差を生み出すためには複数の箇所、今鉛筆が触れている部分以外を気に留めながら加筆できるといいですね。

参考作品2

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

この作品も基礎体力の充実を感じる作品です。細やかに観察しながら丁寧に加筆している描き込みが、作者の制作に対する誠実な姿勢を感じさせてくれる良い作品です。一つ一つのパーツが持っている材質感と、写真のような自然な光の諧調が表現できるとさらに良くなります。

参考作品3

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

前出の2作品と比べると、やや完成度が不足しているように見えて残念ですが、基本的には丁寧な観察が作品をしっかり支えてくれている良い作品です。靴の爪先部分の描写がとても良いですね。観察の充実感と同時に周囲の空気まで表現できていて、リアリティがあります。同じ方向に揃ってしまった靴の配置など、画面構成はもっと意識する必要がありますね。

参考作品4

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

描き込みの強弱が短調で、やや硬い印象が強いデッサンですが、この細密描写の課題の目的からすると、とても評価できる取り組み姿勢です。今後出題される様々な課題のデッサンでも、この観察量を維持するように心がけて欲しいです。

参考作品5

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

繊細なトーンを感じ取れる作者の感覚が、魅力的に現れている作品です。白が基調のシューズを選択する時点で、すでに絵のイメージを持って取り掛かっていることがよくわかりますね。諧調の幅が少ないながらも表現しようとした皮の質感や細かな起伏はOKなので、靴の形の狂いが治ると良いですね。

参考作品6

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

丁寧に観察して丁寧に加筆することが、こんなにも魅力的な作品になるんだということを、改めて感じさせる1点。この繊細な感覚が素晴らしいです!水平な台に落ちる影の解釈や、明暗による立体感がもう少し現れると良かったですね。

参考作品7

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

基礎トレーニングからの「明暗」の意識づけを感じさせてくれる作品です。また自然に捉えている感覚も良いですね。爪先とソールの白いゴム(?)部分に、もう一息充実感と明暗の差、またそれらが床に落とす影が表現できると、もっと良くなると思います。

まとめ

42.195kmを走りきることがこの課題のポイント!
「いや〜まだまだ走れるかもな」と思う人は、是非是非さらに加筆してみましょう!