デッサンの基礎:パース(遠近法)

鉛筆デッサンのルールを理解しよう

「このリンゴはツヤツヤしていて甘酸っぱい良い香りがしてきそう・・・」「この紙風船は今にも転がり出しそうなほど軽やかで、触ったらパリパリと乾いた軽い音がしそう・・・」などなど、絵を描く上で、その対象が持っている魅力を感じ取る感覚はとても大切です。なぜならそれが「表現」につながるからです。甘酸っぱい良い香りがしてきそうなほどリンゴがリアルに表現されていたら、とても魅力的ですよね。リアルに表現するために、目を使って、耳や鼻を使って、五感をフルに使って、モチーフが持っている魅力を感じ取ってみてください!

さて今回は感覚的な観点ではなく、絵の中には一定のルールがあるという理屈のお話です。文章表現でいうと文法にあたる部分です。「何か面白い本が読みたいな」というのが本を手に取るきっかけだと思いますし、それを書く作者も「こんな面白い事柄を描いてみたいんだ」というのが表現のきっかけだと思います。作者の創造性に任せて頭に思い描く言葉を片っ端から羅列したら、それはそれで面白い何かが出来上がりそうですが、読む私たちは何が何だかわからないでしょうね。
そこで文法の登場です。文法が客観的に情報を整理し始めると、たちまち話の道筋が現れて、私たち読み手はその小説のストーリーの世界に没頭していくことになるはずです。
絵も小説も、作者の鋭い表現感覚と同時に、情報を整理するルールの両方が備わっていないといけないんですね。
絵を描く上でのルールは様々あるのですが、今回説明するルールは「パース」です。

透視図法

パースとは、英語の「Perspective(パースペクティブ)」の略で、本来の意味では、「遠近法」「透視図法」「透視図」などの総称になります。絵の中に空間を表現するためのルールの一つです。
受験指導の中で、「パースが狂ってる」、「逆パースだよ」、「オーバーパースだよ」などという言われ方をすることがあります。それは、これから紹介する透視図法のルールに沿った自然な空間表現ができていないよ、と指摘されているのです。
一度パースを直し始めると、「やればやるほど何が正しいのかわからなくなってきた!」なんてこともよくある、習得するのが難しいルールです。理屈は知らなくても感覚的に自然な遠近感を捉えられる人もいれば、とにかくそれが苦手な人も・・・。いずれにしても、画面のなかの形や空間の歪みを発見し、直していけるようになるためには、一度はっきりとその理屈を理解しておきましょう。

一点透視図法

図のように、形の延長線が一点の消失点に向かっていく空間表現の遠近法を、一点透視図法と言います。電車の線路がモチーフの絵や写真で、この一点透視の構図を見かけることが多いですね。

レオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」

なんといってもこの一点透視図法を使った作品の代表は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」でしょうね。室内の壁やテーブルの形を見てみると一点透視図法で描かれているのが分かります。消失点がなんとキリストの左目に重なるように設定されているんですね!

二点透視図法

通常の静物モチーフ、はニ点透視図法が最も自然に表現できます。一点透視もニ点透視も、それぞれが空間表現のルールの一つという点では違いありませんが、対象を立体的に捉えるという点において、より多くの面が見えているニ点透視の方が表現しやすいです。言い方を変えると、ニ点透視図法で表現することのできる角度からモチーフをみる事が、形の立体感の表現をを損なわずに自然な空間を表現しやすいということになります。

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三点透視図法

高層ビルなどスケールの大きな対象を描く時に使われるのがこの三点透視。

二点透視図法の応用

ブロックの形の描き方

二点透視図法を使って、静物デッサンでも頻繁に出題される、コンクリートブロックを描いてみましょう。図は一般的な静物などで、台上に置かれたブロックの目線と消失点を表した図です。消失点はかなり離れた位置になるので、実際に消失点を打って形を取っていくことは不可能です。
ですから、図のような見え方を頭の中でイメージし、感覚的に捉えられるようにならなければなりません。感覚を鍛えてくれるのは経験(練習)だけですが、理屈を理解した上で経験(練習)することで、経験(練習)はより意味のあるものになるでしょう。

実線が実際に目に見えてくる線。破線は、構造を捉えられるために見るべき線になります。底面の形は見えていない裏側の形も繋げてあたり、水平な面として自然に見えているかを確認しましょう。またブロックの穴の形が正確に捉えられるかどうかもポイントです。見えていないところをしっかり捉えられえると、形の精度は格段に上ることでしょう。
さあ!ブロックを描く際には是非チャレンジしてみてくださいね!

〜おまけ〜

余談ですが、”魅力を感じ取る感覚”は、実はみなさん良い感度の受信機をそれぞれが持っているものなのです(と思います)。では誰もが良いデッサンを描けるかというと残念ながらそうではありません。何が問題かというと、”ルールを理解しトレーニングする”時に壁があるようです。まず理屈を理解すること、それを実践して描いてみること、なかなか形が合わないので直すこと。それらを繰り返していくことで、ルールの理解、またデッサン力の向上が果たせます。持続的なトレーニングを積み重ねることができるかどうか。その壁を越えられるといいですね。