美大受験デザイン専攻の色彩基礎トレーニング

色彩構成の基本は明度計画から

色彩構成は、大学や専攻によって何を良しとするかの評価基準がかなり違います。将来的には自分が受験する受験校の色彩構成の方向性をしっかりと理解しなければなりませんが、色彩を自由にコントロールする上での基礎力は共通しています。その基礎力を養うのが今回の課題の目的です。それでは見てみましょう。

幾何構成

B4画面に直線、曲線、正円、正方形、正三角形を要素として以下の条件に従って色彩表現しなさい。
条件
①正円、正方形、正三角形は画面の縁に接しても良いが画面からはみ出してはいけない。
②色面は塗りむら、塗り残し、にじみ、かすれ、ぼかしのない平塗り表現であること。

こちらが今回の課題です。
いよいよ色彩構成!「ポスターみたいな作品をやってみたい!」「入試の過去問をやりたい!」と思っている人にとっては、この課題、最初の印象は「?」かもしれません。ですが、わかっている人にはわかっている、この課題の重要性を。色彩の基礎トレーニングですので、全ての色彩構成の基礎が詰まっています。

色の3属性

色には基本的な三つの属性があります。

・色相

色相とは、赤、青、黄などの色の種類のことです。おそらく日常的に使っている、「赤いシャツ」や「黒の鞄」などの言い回しはこの色相による捉え方です。また、暖色系↔︎寒色系、同系色、反対色(補色)、などの言い方も主に色相に関係した概念となります。

・明度

明度とは、色の明るさ↔︎暗さのことです。ですのでここには、「赤い」「や「黒の」といった捉え方はありません。わかりやすく言うと、白黒に置き換えたときにその色が持っている「白さ」「黒さ」による捉え方です。「この色は明度が高い。」や「この色は明度が低いね」という言い方をされます。
画面構成の7割以上はこの明度のコントロールで成り立っていると言っても過言ではありません。鉛筆デッサンや、モノクロ写真を見ても人は写っているモノの形や質を認識することができると思います。これは、人の目がまず明度差によって、形や質を感じ取っているからです。

・彩度

彩度とは、色の鮮やかさです。派手↔︎地味と考えてもらえばわかりやすいでしょうか?絵具には、複数の色を混色すればするほど彩度が下がっていく特性があり、最終的には無彩色(グレー)になります。彩度が低いほうが画面をまとめやすいのですが、色彩の効果を考えるとできるだけ彩度をキープ(混色を控える)方が良いと思います。

明度計画の重要性

「赤を塗りたい、ここはグリーン、ここには黄色」。色彩構成だから、いろんな色を使ってみたいと思います。でもちょっと待って!実は色彩構成を支えているのは明度なんです。「メ・イ・ド」!今回の色彩基礎トレーニング1の目的は、色を自在にコントロールする力を養うこと!そしてその第一歩は明度を理解することです。

ここに挙げた2枚の色彩構成、それぞれグレーとカラーの2パターンを用意しました。注目して欲しいのは、右側、グレーの画像です。白黒なんですが何を描いているのかわかりますよね?明度の説明でも触れましたが、鉛筆デッサンやモノクロ写真を見ても、人は写っているモノの形や質を認識することができると思います。これは、人の目がまず明度差によって、形や質を感じ取っているからです。つまり、明度のコントロールが「色相」を支えているのです。このように、まず白黒のコントラストを使って画面構成を組み立てていくことを「明度計画」と言います。
もちろん「色相」には、それ自体が持っている魅力があります。「情熱的な赤」や「クールな青」といった言い回しは、色相の魅力を表現したものです。将来的にはこの色相が持っている力をもコントロール下において色彩を自在に操れるように、今回は「明度」を最優先してこの課題に取り組んで欲しいと思います。

今回の課題の明度計画

色彩構成:幾何構成の作品1
色彩構成:幾何構成の明度計画作品

今回の課題の説明します。まず、直線、曲線、正円、正方形、正三角形を使って構成を考えます。その後、いきなり絵具で色を塗るのではなく、鉛筆などで「明度計画」をします(白黒の画像)。どのように明度計画するかは、皆さんにお送りしている手引きにしたがってください。手引きが無い方は、youtube "hamavideo"の「色彩基礎レクチャー&色彩基礎トレーニング1課題説明」をご覧ください(5:46あたりから)。しっかりと明度計画ができたら、それに沿って色相を選んで着色していきます。あえて極端な言い方をしますが、まず明度計画がしっかりできていればこの課題の7割ぐらいはできたといっても良いです。そして、その明度計画に沿って、何色でも良いので明度に適した色を塗ってください。

※色(色相)を選ぶ際の注意
1、できるだけいろんな色相を選んで、できるだけチューブの色のまま(混色せず)塗ってください。様々な色でもコントロールできる力養うためです。
2、絵具が豊富にある人は問題ないですが、まだ色数が少ない人は混色して明度を調整して着色してください。ただし、混色は2色までにしてください。(それ以上混ぜるとかなり彩度が下がってしまいます。)

色見本制作

課題の幾何構成の前に、この色見本と、次に説明する溝引きにぜひチャレンジしてください。

色見本カードは、その用途によって様々な形がありますが、ハマ美では1辺3cmのこんな形の色見本カードを作ってもらっています。

自分が持っている絵具のチューブの数だけ作ります。

作った色見本カードを、明度、色相のルールに従って表に配置していきます。横軸は色相にまとめて明度順に、左から右へ向かってだんだん明度が低くなるよう配置します。縦軸は、色相を跨いで同じ明度の色は配置していきます。この色見本表を間違いなく配置するのはなかなか困難な作業です。一回で適した配置になることはおそらくないので、粘着力を弱めたテープで仮止めしてください。何度もとったりつけたりを繰り返して、適した配置に近づける作業になり時間がかかると思います。しかし、この作業自体が、色を明度で見ていく力を養ってくれるので諦めずに続けましょう。ちなみに何十年も生徒指導に関わっていますが、1回でできた人はこれまでたった1人です。

溝引き

溝引きというのは、定規に彫られている溝をガイドにして直線を引くテクニックです。(左)
今回の自主トレーニングは、B3画面にひたすら溝引きのテクニックを使って線を引くものです。(右)
B3全面に明度の高い色(明るい色)を全面にむらなく塗る。全面に塗った色よりも明度の低い色(暗い色)で、1cm間隔、線幅1mm程の直線を、溝引きを使って全面にひく。 ※鉛筆で下書きをしてその上をなぞるように溝引きしましょう。

明度で色を捉える力を養って、
自在に色彩を操れるようになろう!

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