靴のデッサン | 描き方のコツや良い構図は?細密描写に挑戦

徹底的な細密描写=42.195km

基礎トレーニング課題1

台上に置かれた幾何石膏が同一台上に配置された状態を想定し鉛筆デッサンしなさい。
①直径10cm高さ20cmの円柱
②直径10cmの球体
③一辺10cmの立方体
④底面直径10cm高さ20cmの円錐

基礎トレーニングの重要点は、「光の方向を設定する」、「影の形を理解する」、「形の精度を高める」でした。
特に「光の方向を設定する」は、立体感を表現する際に最も効果的な方法ですので最優先事項です。
絵は真っ平らな紙の上の二次元の世界。その紙の上に、あたかも物がそこに存在しているかのように立体的に表現するためには「操作」が必要です。
その操作の一つが「明暗」。これが全てのモチーフを表現する上で第一優先の共通の基礎ルールでした。

基礎トレーニング課題の詳細はこちら!
幾何形体のデッサン3ポイント | 幾何石膏を描くコツと参考作品

靴のデッサンで大事なこと

今回の課題「細密描写」

台上に置かれた自分の靴を細密描写しなさい。

※スニーカなどの紐履をモチーフとする
※最低でも10時間をかけ、徹底的に描写すること

今回の課題は、基礎トレーニングの要点をベースとしながら、「どこまで描けるか?」を問う課題です。ですので課題も”細密デッサン”で、しかも”最低でも10時間以上を費やせ”という条件がついているのです。

デッサンをマラソンに例えると・・・

デッサンをマラソンに例えてみます。
42.195kmを最速で2時間04分56秒(日本記録:2025年10月現在)で走りきります。すごいですね!
そして、目指す42.195km地点は、細密描写(描くところがなくなるぐらい細部まで描写すること)とします。
完走して、なおかつ日本記録に迫るタイムをみなさんも受験期の2月に出せるようになっている必要があります。
はじめのうちは、2時間04分56秒のタイムを出せる人も、ましてや42.195kmを走りきれる人もいないと思います。
さて、どうすればいいでしょうか。
是非是非、今の自分自身に置き換えて、どうやってその力を身に付けていったらいいか想像しながら考えてみてください

基礎的な力=走り方を知ること

我々、横浜美術学院の講師はこう考えています。
タイムはどうあれ、まずは走りきれる体力をつけることを優先する」。
タイムを競う以前に完走できなければ意味はありませんよね。走りきれるようになってきたら、タイムを出すことを目指す。そんなふうに我々は考えて、一年間のカリキュラムを作っています。
そして、おそらく完走がしやすくなるであろう基本的な「走り方」を知るのが、最初の基礎トレーニングです。
「光の方向を設定」すること、「影の形を理解」すること、「形の精度を高め」ること。

走り始めの1km地点でも終盤の42km地点でもアドバイスすると思いますので、意識しながら完走を目指してみましょう!

「基本的な走り方を意識ながら、タイムは気にしなくていいから42.195km(描くところがなくなるぐらい細部まで)を走ってみよう!

今回の課題のポイント1:構図

  • 2つの靴が小さくならないよう画面全体に大きく入るよう心がけましょう。
  • 靴が台上に落とす影もモチーフの一つ。落ち影も含めて収まりよく入るようにしましょう。
  • 台上の手前/奥の空間感を意識して、2つの靴の配置を考えましょう。

今回の課題のポイント2:描き進め方

  1. ”ポイント:1”の構図の入れ方が大体決まったら、全体に当たりをとっていきます。いきなり一つ一つの靴に手を入れないように!バランスよく全部に手をつけていきましょう。
  2. 「基礎トレーニング課題1」を参考にしながら、明暗を捉えて描き進めていきましょう。
  3. 徐々に細部に取り掛かります。表面の質感の違いや、細かな凹凸、縫い合わせ目などの結合部等、細密にとことん描写しましょう!

今回の課題の優秀作品

参考作品1

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像
鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

今回の課題で良かった作品です。
42.195kmを走りきる体力がついてきていると感じます。細部まで丁寧に観察されていて見応えのある、参考になる1枚ですね。ここからは良いタイムを出すために、効果を考えて加筆できるといいと思います。
一番有効なのは「差」を作ることです。明暗の「差」、固有色の「差」、質感の「差」、調子の質の「差」です。
差を生み出すためには複数の箇所、今鉛筆が触れている部分以外を気に留めながら加筆できるといいですね。

参考作品2

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

この作品も基礎体力の充実を感じる作品です。
細やかに観察しながら丁寧に加筆している描き込みが、作者の制作に対する誠実な姿勢を感じさせてくれますね。
一つ一つのパーツが持っている材質感と、写真のような自然な光の諧調が表現できるとさらに良くなります。

参考作品3

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

前出の2作品と比べると、やや完成度が不足しているように見えて残念ですが、基本的には丁寧な観察が作品をしっかり支えてくれている良い作品です。
靴の爪先部分の描写がとても良いですね。観察の充実感と同時に周囲の空気まで表現できていて、リアリティがあります。
同じ方向に揃ってしまった靴の配置など、画面構成はもっと意識する必要がありますね。

参考作品4

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

描き込みの強弱が短調で、やや硬い印象が強いデッサンです。
ですが、この細密描写の課題の目的からすると、とても評価できる取り組み姿勢です。
今後出題される様々な課題のデッサンでも、この観察量を維持するように心がけて欲しいです。

参考作品5

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

繊細なトーンを感じ取れる作者の感覚が、魅力的に現れている作品です。
白が基調のシューズを選択する時点で、すでに絵のイメージを持って取り掛かっていることがよくわかりますね。
諧調の幅が少ないながらも表現しようとした皮の質感や細かな起伏はOKなので、靴の形の狂いが治ると良いですね。

参考作品6

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

丁寧に観察して丁寧に加筆することが、こんなにも魅力的な作品になるんだということを、改めて感じさせる1点。
この繊細な感覚が素晴らしいです!
水平な台に落ちる影の解釈や、明暗による立体感がもう少し現れると良かったですね。

参考作品7

鉛筆デッサン:靴の細密描写の作品画像

基礎トレーニングからの「明暗」の意識づけを感じさせてくれる作品です。
また自然に捉えている感覚も良いですね。爪先とソールの白いゴム(?)部分に、もう一息充実感と明暗の差、またそれらが床に落とす影が表現できると、もっと良くなると思います。

まとめ

42.195kmを走りきることがこの課題のポイント!
「いや〜まだまだ走れるかもな」と思う人は、是非是非さらに加筆してみましょう!

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