モチーフを自分で選ぶときのポイント3つ

こんにちは。
高1生・高2生科の講師の村です。

美大の入試問題には、大学や専攻によって様々なものがありますが、時には描くべきモチーフが与えられないケースもあります。今回ご紹介する課題も、絵の中に描くモチーフを自分で選ぶタイプのものでした。こんな課題です。

週3日&週2日クラス  構成デッサン課題
出題:「私物を持った手を描きなさい。」
(B3サイズ・制作時間6〜9時間)

私物というのは、自分の持ち物ということです。つまり「あなたの持ち物をモチーフにしてください」ということですね。こんな課題が入試本番で出題されたら、ちょっと焦ってしまいそうですね。バッグの中身を一切合切だしちゃう人もいるかもしれません。画材・文房具・化粧品・衣服…。いったい何を使おうか。他の人に差をつけるには何を持つべきか。家からあれを持って来ればよかったな。私物が走馬灯のように頭の中をグルグルするかもしれませんね。

こういった場合は、以下のようなモチーフ選びの基準をいくつか持っていると、落ち着いてやれると思います。

1、それを持ったら手の姿が美しく見えるか
2、手とはまったく異なる性質をもっているか
3、持つとモチーフの形が面白く変化するか
1、それを持ったら手の姿が美しく見えるか

手というのはそれだけでも十分美しいものですが、物を持ったり道具を使ったりするときの手はまた違った表情を見せます。例えば、雨が降った時に傘をさそうとしたら、手はどんな風に動くか。傘を扱う手はいろんな動きをするはずです。きっと普段の生活の中では、当たり前すぎて気にも留めないような些細な動きですが、そんな一連の動作の中に、物とそれを持った手が美しく見える瞬間があるのです。

2、手とはまったく異なる性質をもっているか

手は生き物の体の一部ですから、自然物といえます。人によって違う形状ですし、柔らかいフォルムがあります。一方で、工業製品などは基本的にはすべて同じ形です。ハンドメイドの物ではなく、工場などで大量生産されている物ですね。こういった物をモチーフにすると、手との性質の違いが魅力的に見えます。色の違い・形状の違い・材質の違いなどを積極的に絵の中で利用していくことで、あらためて「手」というものの美しさを感じられる、という視点です。

3、持つとモチーフの形が面白く変化するか

紙・布・ゴムなど、手で圧力を加えることで形状が面白く変化する素材があります。その変化を利用し、素材の特性を魅力的に見せていくプランです。また、このプランでは「手=複雑に動くもの」ということも同時に表現することができます。一方で、金属・木材・石材などの形状に変化が起こりにくい素材もありますが、こちらは逆に手の形状が変化することもあるので、それはそれで面白いです。硬くて重い素材を持つと手に物が食い込む、といった変化も魅力になりえます。

これは高2生の作品です。作者は先に挙げたポイントのをよく抑えていると思います。決して派手な私物ではありませんが、手と組み合わせた時の相性がいいですね。ゴツっとして量感のある手が華奢な物を持っているという、そのギャップも小気味よく描かれている良い作品です。

モチーフは何でもいいようで、実はそうでもない。そこが難しいところですが、受験生になっても大切にしたいポイントなので、ぜひ覚えておいてください。