モチーフの良いところを発掘する力

こんにちは。
高1生・高2生科の講師の村です。
先週のデッサンコースの課題は、手渡しモチーフの構成課題でした。

週1日クラス出題
「与えられたモチーフ(紙コップとコピー紙)を任意の場に置き、描きなさい。」

(制作時間6時間)

まず「任意」という言葉がちょっとわかりづらいですね。この言葉は美大入試の出題文によく出てきます。「任意の場に」と言われたら、「あなたが決めた場所に」「好きな場所に」という意味です。モチーフがどこに置いてあるかという設定はあなたにお任せしますよ、ということですね。実在する場所でもいいですし、想像の世界でもいいです。とにかく今回は<モチーフ>と<それが置いてある場>までを自分で演出してください、そういう要求なのです。

手渡しモチーフのいいところは、自分専用のモチーフだというところ。持ったり触ったりできるので紙の軽さや質感がわかります。共有モチーフではそうはいきません。大勢で一つのモチーフを囲んで描く静物デッサンの場合、自分の好き勝手に触ることは禁止されます。他の受験生も参考にしているのに形が変わってしまったらえらいことですからね。でも今回は触って確かめることができる。これは絵を描く者にとっては大変ありがたいことです。

さらに今回はモチーフの加工も自由でした。素材が紙ですから、折ることも破ることもできます。加工することで紙という素材をより一層感じることができますよね。

こういう課題の時によくあるのが、モチーフと自分との間にある距離が縮まらないままに、ただ適当に置き、淡々と描いてしまうケース。これはあまりよろしくないと思います。なぜなら、物に対する好奇心が少なく、消極的なことが絵から伝わってしまうからです。与えられたモチーフが何であれ、そのモチーフに何の特徴もないはずがありません。モチーフの良さを発掘する力は、みんなにつけて欲しい力です。

生徒作品を見ながら、モチーフの魅力発掘について考えてみましょう。

高2生の作品

この作品の作者は、紙コップの丸さをうまく利用しています。ただコップの口を見せるだけでは何の魅力にもなりませんが、一部をカッターナイフで輪切りにすることで、コップの円形がより印象的に感じられます。「図形的な面白さ」を発掘できています。

コピー紙の扱いが魅力的な作品です。作者はアトリエにあったホワイトボードに、マグネット付きクリップで貼り付けていました。ですので任意の場はアトリエというわけですね。平たくて薄い紙も、このように動きをつけることで立体的に立ち上がってきます。「紙の独特の硬さやハリ感」を発掘したと言えるでしょう。

紙コップとコピー紙の両方の魅力を活かそうとしている良い作品です。モチーフ1つずつが魅力を語るのではなく、2つをコラボレーションさせようという意識があります。「この2つだからこそ面白いこと」を発掘しています。コピー紙でコップを覆うことによって光と影の対比ができること、背景に思い切った黒さをおくことで紙の白さを感じることなど、様々なことに配慮しています。

何か面白いこと起きないかな〜、とただ待っているだけでは何も起きません。自分から積極的に関わっていき、魅力に気づくことが大事だということです。