
写真から学べること
こんにちは、基礎科です!
突然ですが、「写真みたいに描けたらすごいなあ」と思ったことはありませんか?
今回は、そんな「そっくりに描く」に真正面から挑戦する課題、「写真模写」を週3日クラスで行いました。
図版写真をトレースして、まるで写真そのもののように描いてみる。
一見すると単なるコピーのように見えるかもしれませんが、実はこの練習、デッサン力をぐっと底上げしてくれるヒントが詰まっているんです。
さっそく、生徒の作品を見ながら「写真模写から学べること」を探ってみたいと思います!
シャベルと紙コップの写真模写(Oさん・高校2年生)

こちらは、シャベルと紙コップの写真をもとに描かれた作品です。
まず目を引くのは、シャベルの金属らしい硬さとかっこよさです。
シルエットはトレースしてるため正確なのは当然ですが、それ以上に、「手で持った時の重み」や「ひんやりした感触」まで伝わってくるような密度のある描写になっています。細かい観察をもとに、最後までしっかり描ききっているのが伝わってきます。
その隣の紙コップはというと、シャベルとは対照的に、軽くてやさしい質感がきちんと描き分けられています。紙特有の柔らかさや薄さも、丁寧に表現されていますね。
もちろん、「写真のように描けたら=いいデッサン」というわけではありません。
ですが、実際に写真とそっくりになるまで描いてみることで、
・「ここまで塗り込む必要があるんだ」
・「こんなに黒を強く置いていいんだ」
・「グレートーンの幅ってこんなにあるんだ」
といった、普段のデッサンではなかなか気づけないポイントを体感することができるんですよね。
貝とベルの写真模写(Tさん・高校2年生)

続いて紹介するのは、貝殻とベルの写真をもとに描かれたこちらの作品。
同じ金属でも、先ほどのシャベルと異なり、ベルは軽やかな印象を受けます。金属とひとくちに言っても、質感の幅が広いことをこの2点の作品を通して実感することができますね。
さらに注目したいのが、「背景の描写」です。
おそらく、普段のデッサンよりもずっと時間と手間をかけて、背景トーンを作り込んでいるのではないでしょうか。もしこれが、写真ではなく実物のモチーフを見て描く課題だったら、ここまで背景に手を入れることはなかったかもしれません。
モチーフと同等か、それ以上に背景を綿密に作りこむことで、画面の際まで密度の高い作品に仕上がっていますよね。
さらにこの作者は、ただトーンを塗るだけではなく、床の質感を描き加えています。手前から奥まで続く平面を、しっかりと感じさせる描写になっていますよね。写真を正確に観察し、曖昧さに逃げずに、細部まで粘り強く描く姿勢がうかがえます。
写真模写は「見え方」を広げてくれる
写真模写は、トレースから始まる分、「形の悩み」からは一度離れて、質感や光、トーン、空間にじっくり向き合える練習です。
「見たままを写す」ことに集中することで、ふだんのデッサンでも、より深く対象を観察する力が育っていきます。
今後も、いろんな側面から学べる課題をどんどん取り入れていきますので、お楽しみに!