りんごと熊手のある静物 ― 制作プロセス

制作プロセスから学ぼう

こんにちは、基礎科です。

今回は、以前の実技模試で出題されたことのあるモチーフを、基礎科講師がデモンストレーションした作品をご紹介します。

制作途中のビジュアルには、完成作品とはまた違った学びがたくさんあります。みなさんの制作プロセスをより良くするヒントになればうれしいです。

それでは、描き始めから順に見ていきましょう。

どんな構図にしたいかを決める

りんごと熊手デッサン1

最初の線は、あくまで大まかでかまいません。ここで完璧を目指す必要はありません。

この段階でいちばん大切なのは構図です。

複数のモチーフをB3サイズの画面に収めること自体が、実はとても難しい作業です。そのことを踏まえながら、大きさや配置を柔軟に調整していきましょう。

もし画面の端でモチーフを切る場合は、どのように切るのか、鑑賞者にとって自然でわかりやすいかどうかも考えます。構図が定まると、絵の方向性がぐっと明確になります。

色の配置を意識する

りんごと熊手デッサン2

白い画面のどの位置に暗い部分が入るのかを意識しながら、少しずつ色味を表していきます。

陰影をつけることと、色彩を表すことは似ているようで別の作業です。いま自分が描いているのは「影」なのか「色」なのかを意識しながら進めると、画面が整理されます。

この段階で、完成イメージはかなり具体的になります。今の方向で進めてよいかどうかを、いったん立ち止まって確認できると安心です。

「どんな絵にしたいか」を大切にする

りんごと熊手デッサン3

ここからは、写実と演出のバランスを考えながら進めます。

モチーフを正確に描くことが半分、そしてもう半分は、どんな印象の絵にしたいのかという意図です。

描き始めたばかりの人にとっては、モチーフそのものが大きな支えになりますから、写実に重心が置かれるのは自然なことです。

少し経験を積んできた人は、ぜひ演出にも挑戦してみてください。

たとえば、手前の熊手にいちばん強いコントラストを置く、奥のりんごはやや控えめに仕上げる、といった工夫です。意図をもって強弱をつけると、絵はぐっとわかりやすくなります。

仕上げでは質感を描き分ける

りんごと熊手デッサン4

最後は質感の描写です。

鉛筆を寝かせてざらりとした質感を出す部分と、ていねいに磨き上げるように描き込む部分をつくり、差をはっきりさせます。

実際に触れたときの手触りを想像しながら描くことが大切です。鑑賞者もまた、触感を想像しながら絵を見ています。その想像を引き出す描写があると、作品はより魅力的になります。

まとめ

いかがでしたか。

完成作品が素晴らしいとき、そのプロセスも丁寧であることが多いものです。

技術を磨く時期こそ、途中をおろそかにせず、一つひとつの工程を大切にしてみてください。

ていねいに観察し、ていねいに描く。その積み重ねが、確かな力になります。