この夏、高1生・高2生対象の講座では、将来の志望専攻を考えてもらうための機会を幾つか設けました。

「専攻」とは、高校生にとってはあまり馴染みのない言葉かもしれません。自分がこの先勉強したいジャンルのことを「専攻」と呼びます。美大だったらデザインや油画や建築などのことですね。それぞれ研究することが全然違います。

高1生・高2生科の生徒や、今回夏期講習会に参加してくれている講習生の中には専攻がすでに決まっている方もいますし、「専攻ってなんですか?」という方もいます。みんなに自分にあった専攻を見つけてもらうため、まず大学にはどんな専攻があり、どんな内容なのかを知ってほしい。大学に入ってから「想像していた内容と違う…」というミスマッチを防ぎたい。実技先生たちのそんな理由があり、このような専攻レクチャーを毎年開いているのです。

3年生になると、専攻ごとにコースが分かれますから、事前に専攻について知っておき、進路のことをより具体的に考えて決めていってほしいと思います。

 

まずは、絵画系の専攻を知るレクチャー。油画コース主任であるK先生が様々な絵画表現について、古今東西の作品を交えながら説明して下さいました。

油絵の具の技術を完成させたといわれるファン・アイク。

「これは油絵の具の技術を完成させたといわれる、ファン・アイクの作品。みんな知っているかな?初めての油絵の具なのに、近くで見てみると…ほら!すでにこんなに技術レベルが高い。この時代の人は絵具のチューブを画材屋さんで買ってきて描いていたわけじゃないんだ。まだその技術は発達していなかったから、絵描きは一つ一つの色を自分の手で作ったんだよ。絵具にも様々あってね…」

と、絵画がどうやって発展・変化していったかを、有名な画家とその作品を通してレクチャーしていただきました。途中からは、美術大学で油画を専攻していた作家が立体作品を作っていたり、インスタレーション作品(空間芸術)を作っていたりと、必ずしも油絵の具とキャンバスで作品を作らなきゃいけないわけではない、ということを教わりました。絵画といっても、表現の幅はとても広いんですね。

「美術大学のアトリエがこちらです。この写真は、いま油画コースの受験生を指導してもらっている先生に撮影してきてもらったものなんだ。東京芸大のアトリエはこんな場所なんだね。そして作品講評会をするときには、教授陣が作品の作者を取り囲んで、作者は教授やクラスメイトに自分の作品についてのプレゼンテーションをするんだ。これはタマビやムサビも同じ。作者は自分の口で自分の作品のことを語れないとダメなんだ。どんな意図で作ったのか、なんの研究をどのように進めているのかをね。」

最後は就職のことにも触れていただきました。受験→美大→将来という順に、この先のみんなの進路をイメージできるような構成にしていただきました。とてもわかりやすいレクチャーでした。

 

 

次に、工芸を知るレクチャー。工芸には<陶芸><ガラス><染色><鋳金><鍛金>など、多種多様なジャンルがあるのですが、それらについてデザイン工芸コース主任のT先生が解説して下さいました。

ひと口に工芸と言っても様々なジャンルがある。

「工芸と言われると、何だろうって思う人も多いね。いわゆる伝統工芸ってやつも工芸だし、それ以外にもみんなの身の回りに工芸は溢れている。例えば〈染色〉だけど、いまここに集まってもらったみんながきているTシャツ。それらの色や、表面の柄なんかは〈染色〉と関係があるんだよ。たとえばあなたが今きているTシャツの絵柄はシルクスクリーンという技術を使って作っているんだけど…」

と日常の中に潜む工芸についてたくさんの例を紹介してくださいました。これがすごい面白かったですね。ものが作られていく仕組みを知ったり、こだわりと手間暇がかかっている作品を見せてもらうと、今までなんとなく見ていたものの見方がガラッと変わる感じがしました。工芸の世界がぐっと身近なものに感じられました。

「工芸を自分の専攻として選ぶなら、工芸の中でも何がやりたいのかをしっかり決めたほうがいい。例えばガラスを学ぶなら炉が必要だから大学にその設備がちゃんとあるか調べないと。陶芸なら作品を焼くために窯がいるね。だから選ぶ大学もまた違ってくるよ。」

志望校を選ぶときの基準も教えていただきました。めちゃめちゃ具体的な話でびっくりしました。「そうか、そうやって大学を決めるのか」と思った人も多かったと思います。進路決定にすごく役立ちそうです。

 

さらに、多摩美術大学より生産学科学科長の和田先生にお越しいただき、多摩美術大学の出張大学説明会も行いました。

大学の説明だけでなく、プロダクトを受験する受験生は作品講評もしていただきました^^

 

和田先生は、高校時代の進路を考えていた頃のエピソードや、美大進学決定に至るまでのプロセスなど、先生ご自身の経験談を使って教えてくださいました。会場に集まった高校生やその保護者の方々も、「ああ、そうやってものづくりの道に向かうのだな」と将来をありありとイメージできたのではないかと思います。また、和田先生はプロダクトデザイン専攻の制作スタジオの様子をたくさん紹介してくださいました。

「日本はものすごい技術を持っているし、いままでもずっといい製品を作り続けてきたと思う。技術は日本の誇りだよね。でも、〈人〉は作ってこなかったと思う。人材です。だから僕は、これから活躍できる人材を作らなきゃいけないと思っています。プロダクトデザイン専攻では、正直なんでこんなに忙しいんだと思うくらい課題が過密で、イベントも多い。学生は遅くまで大学に残って制作して、それなのに毎朝9時に必ず出席をとられる。それは、4年後に社会に出してちゃんと働ける人を育てたいからなんです。社会に出てちゃんと働くには体力も必要だし、こうしてイベントをいっぱいやるのは、自分以外の人と一緒に相談しあってプロジェクトを進められる人にならなきゃいけないからです。仕事と同じなんです。」

とてもわかりやすく、かつ刺激的な内容でした。和田先生、本当にありがとうございました。

 

さらに授業では、デザインや油画の課題が試せる【専攻別基礎コース】も設けました。今年は、画材をレンタルできるという仕組みにしたので、ちょっと油画を描いてみたい、デザイン専攻に進む事を考えている、という生徒さんが気軽に専攻別の課題を試せるようにしました。

初めての油画課題の講評の様子。

日本画専攻の課題では、小さめモチーフで水彩画に挑戦。

ここまで描き切れれば文句なし!ですね。素晴らしい^^

 

みなさん、この夏で「専攻」についてたっぷり考えるきっかけがもらえたんじゃないかと思います。ただ待っていても専攻や志望校は決まりませんから、大事なのは行動を起こし始めることです。2学期以降もhamabiの進路指導は続いていきます。

自分にあった専攻を選ぼう!