デッサンで質感を描き分ける【金属・木など任意の質の幾何形体】

デザイン科のデッサンに必要な力とは?

デザイン科の入試問題を見てみると、石膏デッサン、手の構成デッサン、静物デッサンなどなどさまざまな形式の問題が出題されます。
それぞれの学科/専攻の傾向を考えると、あれもこれもといろんな力が必要になってくることも確かなのですが、一方で、共通して問われている必要な力があるんです。
それは、
【明暗を利用した立体感/質感の表現】と、【形を正確に捉える】ことです。

「なんだ、いつも聴いていることか」と思ったあなた!
そう!必要なので、いつも言われるんですね。
そうそう、
分かってはいるんですけど、、、

そうなんです。
「分かってはいるけど、、、、じゃあ、どうやって身につける!?」っていうことが今回のテーマです。
ではここから、

  1. 【明暗を利用した立体感の表現】
  2. 【明暗を利用した質感の表現】
  3. 形を正確に捉える】

の3つに分けて解説していきましょう!

【明暗を利用した立体感の表現】

幾何形体の光・影・形のポイント

立方体の光の方向の図

明暗を利用した立体感の表現】を身につけるためには、光と影の関係性を理解することから始まります。まずは、シンプルな形体を例にしながら、理解を深めていきましょう。
下記で解説しているのでぜひ見てみてください!

幾何形体のデッサン3ポイント | 幾何石膏を描くコツと参考作品

【明暗を利用した質感の表現】

質感表現|木石金属ガラスなどの質感を描く際のポイント

さて【明暗を利用した質感の表現】です。いくつかポイントがあります。

1.稜線

質感を描く際のポイントの画像

稜線とは、面と面の境界にあたるところです。この部分に、物の質感の特徴が現れやすく、観察量を増やし描写を加えていくととても効果的な質感描写の描き方です。特に、明暗のコントラストがはっきりしている稜線(図:赤線部付近の稜線)がポイントです。

木材は、木目の部分や木の繊維のわずかな凹凸を、細かく描写してあげるといいでしょう。
石材も同様の部分に、特徴的な凹凸が現れるので細かく観察してみてください。

練り消しゴム併用して描いていくと密度が増しやすいので、おすすめです。

逆にガラスや金属は、表面がとても平滑なので、鉛筆のタッチを残さないぐらいのつもりで、綺麗にトーンを整えながら加筆すると良いでしょう。
その際、ガーゼやティッシュを使って擦りながら定着させましょう。

どちらの質感表現でも、稜線付近は手数が多く入っていく場所なので、筆圧をかけすぎると画用紙が痛んで鉛筆が乗らなくなるので、優しい筆圧で描ける鉛筆を選んでください。

HB、F、H、2Hあたりがおすすめです。
芯はしっかり尖らせて、ピントを合わせるつもりで描いてみましょう。

2.表面の反射:映り込み

表面反射とは「光が物質の表面で跳ね返る現象」です。これがあるおかげで私たちは物の「ツヤ」や「質感」を感じ取ることができています。
ガラスや磨かれた金属の表面には、周辺にあるものが反射して写り込んでいます。この写り込みを描くことで、ガラスや金属の質感表現に繋がります。

質感を描く際のポイントの画像
ここで、ワンポイント!
赤い線を見てください。

画像はガラスの球体のデッサンです。アトリエの窓や横に置いてある立方体、モチーフが置いてある台などの映り込みを描いてその質感を表現しようとしていますね。
ここで赤い線に注目してください。この線はガラスの球体に実際に引かれているわけではありませんが、球体の表面に沿って描かれた想定の線です。例えば、地球儀に引かれている緯線や経線だったり、球体に沿って巻かれている赤い毛糸などのような線をイメージしてみてください。
この想定した線に沿うように、写り込みを形取ってあげると、質感の表現と同時に形の表現にも繋がり、とても効果的な描き方になります。
写り込みやハイライトは、ノック消しゴムを使って消しながら描写するのがおすすめです。

アトリエ風景スナップ
ハイライトや写り込みの描写に最適なノック消しゴム

消しながら形どりをした後は、硬めの2Hぐらいの鉛筆でしっかり形を整えてくださいね。

形を正確に捉える】

正確に伝わるデッサンの習得方法

1.文法を学ぶ

文章表現には、文章を書く時のルール、文法があります。主語や述語、文章や段落といったように幾つもの決まり事があります。これらの決まり事のいずれも、読み手にとってわかりやすい文章を書くことが目的の一つです。
実は美大受験の絵も同じなのです。感性や感覚、絵を描く才能が優先的に問われていると考えがちですが少々違うんですね。

文章表現も絵も本来は、どんな事柄が魅力的に表現されているのか「内容」が大切です。ですがその前に、相手に伝えるためのルールを確立していないと、何を表現しているのか、何を伝えようとしているのかわかりません。もっとも「デザイン」は第三者に伝えることが仕事ですので、美大入試の中でも特にデザイン科は、描く対象の正確さ、つまり「相手に正確に伝える力」が問われているのです。

絵の文法???

では、具体的何をするのか?
前回のテーマは「光の方向を設定する」、「影の形を理解する」、「形の精度を高める」でした。
立体感を表現する際に最も効果的な方法は明暗をつけることです。絵は真っ平らな紙の上の二次元の世界。あたかも物がそこに存在しているかのように立体的に表現するためには、「操作」が必要です。その操作の一つが「明暗」です。これが全てのモチーフを表現する上で第一優先の共通ルールです。ですので、今後の制作の中でも何度も指摘されると思います。改めて、配布している基本的な継体の明暗とそれが落とす影の資料を読み返して、しっかりと頭に入れてくださいね。

2.反復練習

さてルールを理解したら、次は体得することです。体験を通して理解し自分のものにするのです。そのためには、意識下に置いて繰り返し繰り返し実践することです。
ちょっとぶっちゃけてしまいますが、基礎トレーニングの内の「形の精度を高める」こと、つまり形を合うまで直すことなんですが、結局のところ「やる気」次第です。われわれも皆さんと同じ元受験生ですので、同じようなことを指摘されてきましたし、同じような経験を積んできました。「楕円がくるってる!」とか「瓶のプロポーションが違う!」とかいろいろ指摘されますよね。楕円のルールや遠近法など、形を正確に捉える形の解釈は教わりますが、だからと言って正確な形になるとは限りませんから、ひたすら直していくわけです。自分の経験から、またこれまで見てきた生徒の成長のタイミングから判断すると、形の精度が高まるのは、結局のところその人のやる気次第なんだとお伝えするのが一番リアルです。
わかりやすいいところでは、大多数の受験生は12月、1月が一番上達します。しかも飛躍的に!何故でしょう?
”本気度が増しているから”だと思われます。”ヤバイ、どうしよう!!!”これが原動力になっているのだと思われます。
今のうちに受験生として自覚し、しっかり反復練習を積み上げてデッサンの基礎を体得しておいてください!

3.資料収集の癖づけ

今回は幾何形体に想定で質感を表現しなければならない課題です。「〜を想定でデッサンしなさい」という条件は、美大入試ではかなり多く出題されます。その出題の意図は明快です。日常的に物を観察する視点を持っているのかを問うているからです。細やかに物事を観察することがクリエイティブな活動に必要だからです。
これはどんな形をしているのかな〜、どんな色や表情している?など、日常生活の中でなんとなく通り過ぎている物事に、もう少し積極的な目を向け観察をすることを心がけると良いでしょう。また最近ではネットで資料を容易に収集できます。木目の表情や金属の映り込みの資料取集など、積極的にこのようなツールを活用していくと良いでしょう。

課題

台上に置かれた幾何形体が同一台上に配置された状態を想定し鉛筆デッサンしなさい。
また、それぞれの幾何形体に、想定でそれぞれ任意の質を与えること。
例:木材、石材、金属、ガラスなど

①直径10cm高さ20cmの円柱
②直径10cmの球体
③一辺10cmの立方体
④底面直径10cm高さ20cmの円錐

鉛筆デッサン基礎トレーング1[鉛筆デッサンの基礎:「光」「影」「形」@幾何形体]に続く第2段です。前回同様に明暗による立体感を表現することを主眼にしながら、想定の幾何形体に具体的な質感を与えて想定でデッサンする課題。基礎トレーニング1とは比較にならないほど難易度が上がってきます。
今回もこの課題のポイントをおさらいしながら、復習をしていきましょう。

今回の参考作品

今回の課題で一番評価の高かった作品です。良いですよね!絵の文法を理解するための基礎トレーニング課題を、しっかり消化できていると思います。そして、光の綺麗さや鉛筆のトーンの綺麗さといった「内容」の魅力もあって”◎:二重丸”です。立方体のパースがややきついのと、円柱の底面と円錐の底面の楕円がわずかに見下ろしすぎているところが惜しい!!!

基本ルールをしっかりと意識しながら加筆していることが伺え、目指している方向性はとても良い作品です。円錐の底面の楕円の歪さや指示されている形体の寸法など、もっと精度が高められると良いでしょう。立方体が落とす”影”の理解も深めたいですね。

こちらの作品も、基礎トレーニングで求めれていることをしっかり理解しながら制作できていて良好です。円錐の底面の楕円がちょっと見下ろしすぎですね。鉛筆の調子の付きはとても良いので、質感の表現のための情報量(資料収集)がもっと増えてくると良くなります。

この作品を見ると改めて「逆光」の効果を感じますね。光の印象を表現する上で「逆光」は効果的なパターンの一つです。空気感や光の柔らかさなどがうまく表現されています。ですが、基礎トレーニングとしては明暗のルールに破綻がります。今のうちにしっかりと理解を深めてほしいと思います。

横浜美術学院ではデッサンの描き方にまつわるBLOG記事を発信しています。

こちらでは質感を描く事にでモチーフの重さ・軽さを表現しているデッサンが見られます。

【質感で感じる重さと軽さの表現】

こちらではモチーフの質感を描き分けた事による「艶」の多様な表現が見られます。

「果物と野菜のある静物デッサン」制作プロセスの画像
【「果物と野菜のある静物デッサン」制作プロセス】

こちらでは剥製のカラスを描いています。羽毛の質感を描く際のヒントになりますよ。

【カラスを描く:質感・動き・空間を捉えるデッサンプロセス】