幾何形体のデッサン3ポイント | 幾何石膏を描くコツと参考作品

幾何形体の想定デッサン

今回の課題

台上に置かれた幾何石膏が同一台上に配置された状態を想定し鉛筆デッサンしなさい。
①直径10cm高さ20cmの円柱
②直径10cmの球体
③一辺10cmの立方体
④底面直径10cm高さ20cmの円錐

「想定」というのは、具体的なモチーフは何もなく、頭の中であたかもそこにあるように想像し、それを絵に表現するというものです。
今回の課題の目的は、鉛筆デッサンの基礎トレーニングとして、光の明暗を意識して立体感を表現することです。シンプルな形(今回は4種の幾何形体)をモチーフとすることで、できていること・できていないことを明らかにし、成果をはっきり確認することができます。
さてさて制作するにあたって、3つのポイントがあります。

幾何形体を描く:3つのポイント

1.光の方向を設定する

立体感を出す一番のコツは、やっぱり明暗をしっかりつけること。
でも実際、モチーフの前に座ったときに「完璧な光の設定状況だ!」なんてまずありません。そもそも絵は二次元の世界。真っ平らな紙の上に、あたかもそこに物があるかのように見せるには、“ちょっとした操作”が必要です。その代表が「明暗」。自然で違和感なく光と影を描き分けられるかどうかは、まさに画力の見せどころです。
しかも今回は「想定」。実物はない分、光の当たり方や影の形も自由に決められる——そこがこの課題の面白さと難しさなんですね。

前光

立方体の光の方向の図

一番適しているのは図のように、光の方向が斜め手前から対象に光が当たっている状態です。見えている3面にはっきりとした明暗の違いが生まれるので、立体感の表現がとてもしやすい光の設定です。

真上

立方体の光の方向の図

これは真上からの方向から光が当たっている状態です。上面と側面にははっきりとしたコントラストが生まれていますが、側面の2面のトーンに変化がなく、90度違う面の方向を表現することが難しいですね。
また、床に落ちる影がほとんど生まれないので、立方体が台上に置いてあるという空間感の表現も難しくなっています。

逆光

立方体の光の方向の図

こちらは奥から手前に向いている、いわゆる逆光の状態です。光を印象的にまたストーリー性を持たせる絵のプランにはとても効果的です。ですが立体的に表現をすることを優先すると、真上から光が当たっている状態と同じように、側面の2面が同じ階調になってしまうので難しい光の設定といえますね。

2.影の形を理解する。

今回の作品のように、一方方向の光でくっきりぱっきりと幾何図形の影が床に落ちることは、自然界には無いでしょう。ですが、なんとなくな意識で影を描いていると、ただ床が黒ずんでいるように見えたり、物と床の空間関係が明快に表現できなかったりしてしまいます。
ですので今回の課題では、しっかりと意識下に置いて影を捉えることを目指して欲しいと思います。
また影が伸びる方向は、当然光の方向とリンクします。影を描くことが光を表現することになるので、影は重要なモチーフの一つなのです。

3.形の精度を高める。

形を正確に捉えられることは、どんな作品に於いても大きな魅力です。
今回幾何形体に具体的な寸法を指定しているのは、受験へ向けて合格レベルの形の正確さを目指して欲しいからです。パースペクティブや楕円の形を捉えるルールなども、基礎トレーニングとして今のうちにしっかり理解して欲しい点です。
形体がシンプルなだけに、形が歪んでいたり、線が曲がっていたりすると非常にわかりやすい。逆に言うと、正確な形を目指してきちんと取り組むと、成果がしっかり現れると考えて良いでしょう。存分に拘って欲しいところです。

今回の参考作品

今後の制作の指針として、生徒作品を数点ピックアップしてご紹介します。

参考作品1

今回一番良かった作品です。明暗への意識や、形の正確さなどなど、積極的な取り組みが現れている作品です。鉛筆の定着感もあって見応えがありますね。ただ、ちょっと筆致が見えすぎていて仕上がりが荒い印象ですね。楕円や立方体の形にもう少し高い精度が欲しいところ。また、今回は”石膏”の質が指定されていたのですが、やや金属質に見えてしまう点も惜しいところでした。

参考作品2

1枚目の作品と同じように、明るさ暗さをちゃんと意識しながら描き進められている作品です。しっかりとのせられている鉛筆の密度感も良いですね。アウトラインがちょっと強すぎていて立体感をやや損ねてしまっています。床に落ちている影にも同じことが言えますが、意識づけは悪くありませんよ。楕円の形の精度はさらに高めてください。惜しい作品でした。

参考作品3

前述の2点の作品と比べると、やや完成度が劣って見えてしまいます。それぞれの幾何形体の形、床に落ちた影の形の不正確さに問題がありますので、しっかりと復習してみてください。この作品にさらに加筆してみたり、もう一枚新たに描いてみるなどして、復習しても良いかもしれません。なぜこの作品をピックアップしたかと言うと、光があたった明るい世界と暗い世界が、しっかりと描き分けられ、尚且つ自然に表現できている点が素晴らしいからです。

参考作品4

最後の一点。しっかりと課題に取り組む真摯な姿勢を感じる作品です。影の世界にある「陰」と「影」を描き分けようとしている点が素晴らしいです。是非みなさんも参考にしてください。でも、影の出方のルールをもう一度確認しましょう。楕円の形もあともう一息です。立方体の形もさらに正確に!

〜おわりに〜

みなさん、復習をしましょう!絵も英語や国語の勉強と同じように、予習と復習が大切です。
この記事を見直してみたりしながら、ポイントを整理してみるのも良し、もう1枚新たに制作するのも良いでしょう。描きっぱなしにしないことが上達の秘訣です!

ファイト!