3学期実技模試の講評会と優秀作品

こんにちは。
高1生・高2生科の講師の村です。

今回は、前回に引き続き3学期末の実技模試についてお伝えします。

今回の実技模試は静物デッサンでした。変則的な課題ではなく、非常にベーシックな課題。はたして基礎的な描写力がどの程度発揮できたでしょうか。この1年間で勉強してきたことには様々なことがあったと思います。光の表現・形の表現・色彩の表現・質感の表現…これらを総合的に駆使して描くのがこの課題です。

また「自分の力で最後まで責任を持って描ききること」も試験を想定したこの模試の大事な目的の1つでもあります。入試は最終的には1人で全てを行わなければなりません。隣で先生が注意してくれたり、アドバイスをくれたり、そういった補助は一切なくなるわけです。そんな中で自分で考え自分で、描き、終わらせる。これを機に「1枚の作品を仕上げる」と言うことを改めて意識し直してみるのも良いと思います。

実技模試の合同講評会には、各クラスを受け持っている全ての先生と、すべてのクラスの生徒が一堂に会して行われました。自分の作品がどのような評価を受けたのか、教室に入ってきた生徒たちはものすごく気にしていました。予想外の評価にショックを受けた人もいたかもしれません。逆に評価が高くて飛び跳ねるほど嬉しかった人もいるかもしれません。どちらにしても、今その人にとって必要な評価がされたのではないかと思いますので、次の1年間に活かしていってほしいと思います。

横浜美術学院_授業風景

では、今回の課題の上位作品をご紹介していきます。

デザイン工芸・日本画・油画基礎コース(週4日クラス)
出題:「セットされた静物を描きなさい」
横浜美術学院_高2生の作品

【第1位】デザイン工芸基礎コース在籍生作品
モチーフのほぼ真正面というアングルが潔い作品です。ですがその反面、奥行きを表現することが難しいアングルでもあります。作者は壁に立てかけられたステンレスパイプの遠近感に最新の注意を払いながら制作しています。壁と床によって生み出されるL字の空間を表現するのは大変だったと思いますが、この作品はそれに成功していると思います。

横浜美術学院_高2生の作品

【第2位】油画基礎コース在籍生作品
このモチーフのセッティングがわかりやすい作品です。この作品は木炭によって描かれていますが、木炭独特の黒の色の表現や、その質感が、非常に魅力的な作品に仕上がっています。ただ、床に点々と置かれているニンニクは、サイズこそ小さいですが、もう少し皮の白さを利用するなど、色を有効に使えるとより色彩表現が豊かになったと思います。

デッサンコース(週3日クラス)
出題:「セットされた静物を描きなさい」
横浜美術学院_高2生の作品

【第1位】
堂々としたモチーフの印象が魅力的な作品です。モチーフのセッティング状況を明快に伝えるとともに、モチーフの製品としての美しさを大事にしながら描いていることがわかります。またメインのモチーフである硫酸瓶を取り巻く周辺の空間には、たっぷりとした広さを感じます。それがこの作品を気持ちよく見せてくれるポイントなのだと思います。

横浜美術学院_高2生の作品

【第2位】
この作者は椅子に座らずに立ったままで描いていました。そのため、かなり上から見下ろしているアングルになり、それがこの作品の魅力につながっています。ただこのままだと硫酸瓶の背後に立てかかっている針金のロールの積極的な描写に負けてしまうので、より強い描写が硫酸瓶の口の先端部分にあると、作品がグレードアップしたと思います。

横浜美術学院_高2生の作品

【同率2位】
ガラスの質感がとても美しく描かれている作品です。鉛筆の中間トーンを微妙に調整しながら透明感を演出することに成功しています。ただ、構図に関しては1位の作品と比べると少々小さく感じられます。両手で抱えてやっと持てる位の大きさの瓶であることを、どのような構図をとれば伝えられるのか。それを研究することがスケール感の表現につながります。

デッサンコース(週2日・週1日クラス)
出題:「セットされた静物を描きなさい」
横浜美術学院_高2生の作品

【第1位】
非常にバランスのとれた作品です。構図・質感・距離感・色彩表現など、あらゆることに配慮が行き届いている点が優れています。光に包まれているようなふんわりした印象が、少々弱さにつながっているのが気になりますが、ウレタンスポンジの柔らかさや鉄パイプの重さなど、触覚的な情報が数多く盛り込まれているリアルな作品です。

横浜美術学院_高2生の作品

【第2位】
工業製品の硬さをよく捉えているキレの良い作品です。鉛筆の硬さ・柔らかさを微妙に変えながら、また、筆圧も変えながら描いているので、表現が豊かに見えます。ワイン瓶は微妙に比率がずれているので、いま一度、瓶の太さに対して高さはどれぐらいなのか、どこからくびれが始まるのか、などをよく確認する必要があると思います。

横浜美術学院_高2生の作品

【同率2位】
上下左右に気を配り、もうこれ以上はないというくらいギリギリの構図をとっている作品です。構図に無駄がないので、それだけで作品の完成度が上がって見えます。このアングルは、立ち上がっているワイン瓶と、寝ている鉄パイプという向きの違いをしっかりと表現する必要がある難しいアングルです。作者はそのことに注意しながら、状況を正しく表現することに成功しています。

【同率2位】
非常に色彩豊かな作品です。鉛筆の色の特徴をよく理解し、固有色の強いものと弱いものに合わせて色を使い分けています。重さ・軽さなどの重量感の表現に作者はとても気を配っていることがよくわかります。この先の課題は、色だけでなく形の情報を増やすこと。ワイン瓶の背中側の丸さをもう一息出す、曲面に貼られているラベルが裏側に回り込む様子を描くなど、突っ込んで描くポイントを探しだしましょう。

横浜美術学院_授業風景
横浜美術学院_授業風景

これにて3学期は終了です。
みなさん、1年間ほんとうにお疲れ様でした!
この後は春期講習会が待っています。描写力はもっともっと伸びます!頑張ってください〜!!^^