床(ゆか)を描く

B!

こんにちは。
基礎科講師の村です。

今回は、二学期に行なったベーシックな静物デッサンの授業をご紹介したいと思います。記事の最後には、3点ほど優秀作品を紹介しています。解説コメントも書いてみましたので、それも含めてぜひ読んでみてください^^

では、課題紹介です↓↓↓

週1〜2日クラス課題
出題:「セットされたモチーフをデッサンしなさい。」
モチーフ:緩衝材(発泡製クッションシート)、ホーローポット、玉ねぎ

全体的に白くてシンプルなモチーフですね。生徒たちも、ムムム!とちょっと警戒しながらも、早速描き始めていきます。

 

 

このモチーフを描くときに注意したいのは、モチーフの下にふんわりとしたシートが敷いてあるということ。その膨らみやシワに惑わされてしまうと、途端に床の水平性を失い、見づらいデッサンになってしまいます。こういう時、注目すべきなのはシワの頂点ではなく、シワの発生元。元がどこなのかが描ければ、それが床の存在感を伝えてくれます。

配置された物の描写をどんどん描くことは悪いことではないのですが、同時に接地点をチェックすることができないといけないということなのです。

具体的に生徒作品を見てみましょう!


鉛筆の色に淀みがなく、光が綺麗に感じられる作品です。この作品は、垂直・水平がしっかりと表現されていて、安定感がありますね。真っ直ぐに垂直に立ち上がるポット以外の物は、ほとんど斜めの角度がついていて、そこが難しいポイントです。例えば、緩衝材のシートは斜め45度のアングルから見ているので、右上がり・左上がりのラインが目立ちます。玉ねぎもコロンと転がっているので軸が斜めになっています。ですので、やもすると場の安定感を失ってしまいがち。この作者はその点、うまくいっていますね。

 


緩衝材のシートの下にしっかりと床がある、と感じさせてくれるデッサンです。ふんわりと膨らむシートは、実はその膨らみを描写をすればするほどユラユラと波立ち、安定感がなくなってしまうものです。まるで魔法の絨毯のように、ふわふわと空中を浮遊しているように見えたりするデッサンも沢山あるんです。しかし、この作品に描かれている床は、ポットや玉ねぎなどの重量があるモチーフをどっしりと受け止めています。それが明快に感じられるのがこのデッサンのとても上手い点です。

 


からりと乾いた空気が気持ちが良いデッサンです。作者は鉛筆の調子を指やガーゼで擦ることを必要最小限に抑えて、線による描写を多くしています。そのため、作品全体が非常にシャープに感じられます。ポットで押さえつけられたシートと、反発して跳ね上がる手前のシートの端の描写は、その柔らかさを十分に伝えてくれていますし、ポットの重量感の表現として大変よくできています。触った時の感触が伝わってくる良いデッサンです。

いかがでしたか?
デッサンを本格的に勉強していくようになると、必ずといっていいほどぶつかる壁があって、それがこういった「床」に関する問題なのです。
「床を自然に」
「床をフラットに」
「床に落ちる影を積極的に」
など、アトリエでは床に関することを指導する先生の声が聞こえてくることがとても多いんです。それだけ大事だということですね。地味だけど、みんな床が描けるように頑張ろう!
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