デッサン力の素:形の「理由」を考える

B!

布という素材は、状況によって様々な表情を見せてくれる魅力的なモチーフです。そして、これまでたくさんの画家が絵に描いてきたド定番のモチーフといってもいいと思います。
しかしながら、実際に描いてみるとなるとこれがなかなか難しい。すんなり形が合わない。出だしで苦戦してしまう時というのは、うまくいくのか不安になったり、ちょっと焦ったりしてしまいますよね。

木製パネルに貼り付けた布

なんでこうなっているんだろう?
形の理由を考える

そんな時の原因というのは色々あると思いますが、ひとつには「理由」を考えて描いていない時に、たいてい形の狂いが起こりやすいというのがあります。「理由」というのは、モチーフを観察する時に「なんでこうなってるんだろう?」と考えることです。理由を考えずにただ眺めて、ただ手が動いているとしたら要注意です。

例えば、この布はパネルに2箇所ピンで留めてあります。ピン自体は見えませんが、その位置はなんとなくわかりますよね?布のしわというのは、そこから発生していませんか?布の重さで垂れるしわは、元をたどればピンの位置。つまりそういう関係性を無視してしわを描くと、つじつまが合わないので形が狂うのです。

もうひとつは、「これは1枚の大きくて四角い布である」ということを思い出すこと。ピンを外して、布のめくれを直して、元に戻したら1枚だということは、きっと誰でもわかる当たり前のことと思いますが、描いているとどうしてもそういうことがどこかへ飛んでいっちゃうんですよね。しわを一個一個パーツみたいに分けて描いて、後で合体させちゃう人もけっこう多いです(笑)

この作品はデザイン工芸基礎コースのHさん(高2生)の作品です。描いている形に理由や根拠がある感じがしますね。見れば誰でも知っている当たり前のことを、しっかり表現できるととてもリアルになります。
「形の理由を考える」
ぜひモチーフを見るときに観察してみてください。

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