水彩画をはじめたい初心者の方におすすめする筆

画材ブログタイトル 水彩画の筆
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水彩画の筆えらびは難しい

筆の種類はとにかく多い!

水彩の筆選びは難しいのです。油絵の場合はタッチを変えたり、柔らかめの絵具か硬めの絵具かで筆を替えたり、また、制作中に頻繁に筆を洗うことも難しく、とにかく筆の本数と種類は多い方がいいです。ある程度描き慣れた方なら30本以上は持っているのではないでしょうか。30本も使うのなら、適当に買ってみたい筆を購入して、どんどん使い心地を試すことができます。もちろんある一定レベルの筆を買う必要はありますが、油絵の場合は質より量がまずは重要です。

一方、水彩の場合、筆をこまめに水で洗えるということもありますが、油絵のように固練りの絵の具を置くこともないのでそれほど種類も本数も必要ではありません。初めは3本あれば十分です

しかし、売り場にあまたある筆の中から「3本を選ぶ」というのはなかなかの難題です^^;

まずは「水彩の筆とはどのような筆なのか」という視点から筆選びの基本を説明しましょう。

水彩・油絵・日本画の筆の見分け方

まず、基本中の基本。絵の具別、筆の見分け方です。

水彩、油彩、日本画、それぞれで使用する筆の見分け方を解説します。
穂先だけでなく、軸の違いにも気をつけよう!

日本画の筆は、主に竹軸で軸から直接スッと毛が伸びています。持ち手は寸胴で細さに変化がありません。明らかに面持ちが違うのでわかりやすいです。

一見わかりにくいのが、水彩と油絵です。どちらも持ち手に口金と呼ばれる金属がつけてあり、その金属をかしめて毛を止めています。穂先だけ見ると同じように見えますが、比べてみると、油彩用の筆は軸が長く、水彩用は短いので比べればはっきりとわかります。

基本は水彩用の筆から選ぶと良いですが、日本画の筆も水彩にはお勧めです。

獣毛か人工毛か

筆の購入を難しくしているのが、この「毛質」です。古くから筆というのは馬、狸、イタチやリスなどの様々な動物の毛から作られきました。ナイロンなどに代表される人工毛もあります。最高級はコリンスキーと呼ばれるイタチの毛で、描きやすさは抜群ですが、希少性もあって、お値段もピカイチです。ちょっと太めの筆になると「万」を超える金額になってしまいますので、初心者の方はそこまで筆に投資する必要はないでしょう。

獣毛の何毛にするのか、はたまた人工毛かはなかなか難しい選択です。

そもそも水彩筆にとって求められる「良さ」の基準とは何でしょうか?

それは、

  • 保水性 保水性の良い筆は、長く画面上で色を塗ることができる
  • まとまり まとまりのよい筆は、エッジを綺麗に決めたり、穂先で細かい部分を描くことができる
  • コシ コシの弱い筆はコントロールが効きにくく初心者には扱いにくい(保水性は良い)

などになります。

まとまりやコシの強さで言えば、人工毛も悪くないのですが、保水性に関しては獣毛に軍配が上がります。また、コシといった点でも獣毛には人工毛にはない「粘り」のようなものがあり微妙なコントロールが効きやすいです。そういった点でも「獣毛」の筆に軍配が上がります。

加えて言えば、

  • 値段

という基準も外せないでしょう。一昔前ならば、迷わず「獣毛」をお勧めしましたが、近年ではメーカーの商品開発も進み、獣毛の良さを再現しつつ手頃なナイロン筆も出ています。(獣毛は原材料の多くを輸入しており、また、動物保護の観点からも希少価値が高くなり値が上がる傾向にあります)「リセーブル」というホルベインの商品は、獣毛のセーブル(イタチ科)の毛質に近づけたり、ナイロンにリスの毛をブレンドしたり)、ナイロンのコシ、まとまりに加え保水性を加味するなどの工夫をしています。商品としてはホルベインの「リセーブル」「ブラックリセーブル」、ナムラの「Norme(ノルム)」「Raffine(ラフィーネ)」などは定評があります。

基本構成は丸筆(大)・平筆・丸筆(小)

水彩筆の基本は軟毛の丸筆です。(ちなみに、油彩の基本は硬毛の平筆です)まずは太めの丸筆を1本揃えましょう。穂先がしっかりとまとまるタイプなら、塗りから、線をひく、描き込む、などオールラウンドに使用できます。オールラウンドに使用できるからこそ、この1本目の筆は良いものを選びましょう。F8号ぐらいの画面サイズで描かれるなら10〜12号ぐらいの大きさの筆が良いでしょう。穂先の決まるものなら、大は小を兼ねます。F6号以下など、小さい画面なら8号程度の筆でも良いでしょう。

平筆は、ウォッシュと呼ばれる平塗りが得意です。風景画の空をピタッと塗ったりするときは、丸筆よりもこちらの方が優秀です。ウォッシュはただ塗るだけなので丸筆でもできそうな気がしますが、丸筆でのウォッシュはムラになりやすく難しいです。白っぽい毛の羊毛が水含みもよく、お勧めです。上記のような筆なら、やや大きめの7号程度が良いでしょう。

細部の描きこみや、線を引くときにはやはり細い筆が欲しくなります。上記の丸筆の号数が小さい、2号程度のものでも良いのですが、イタチの毛などを使用したコシのある筆が使いやすいので、和筆の「面相筆」もお勧めです。面相筆はあまり鋒(毛の部分)が長すぎない、中ぐらいの長さのものがお勧めです。

なお、筆の号数はメーカーや筆の種類により、基準が異なります。統一されていれば良いのですが、そうではないのが現状です。また、描く絵の大きさや、描きたい絵の技法にもより実際には選ぶ筆は変わってきます。あくまでも、上記の基準は初心者の方の目安と捉えてください。

まずはこれ1本!コスパに優れた筆に絞るなら?

とにかく種類がたくさんあって選べない!という方に

筆者が自信を持ってお勧めするなら、

筆者私物のため、少々使い込まれた状態^^;

こちらは日本画用の筆で、「削用(さくよう)」という名前がついています。水含みの良い羊毛の中心にイタチなど硬くてコシのある毛を仕込んであります。たっぷりと絵の具を含ませ、ふわっと塗ることもできますが、絵具の水を切り、しっかりと穂先を尖らせて使用すると、面相筆に負けない細い線を引くことができます。初心者の方に、まず1本を、ということなら迷わずこの筆をお勧めします。実際に教室でも、何人もの生徒さんに勧めてきました。

8号程度までの画面であれば、サイズは「大または大大(削用筆は号数ではなく、小・中・大・大大と非常におおらかなサイズの区分け^^)」が良いでしょう。価格はメーカーにもよりますが、2,000〜4,000円前後です。やや高めと感じるかも知れませんが、面相筆と彩色筆の2in1と考えれば妥当な値段かと思います。

この削用に加え、ピタッとした「ウォッシュ」の技法もやりたい、という場合は上述の平筆をさらに追加すると良いでしょう。初心者の方であればこの2本で十分です。

筆選びは奥が深い

筆も日々進化しており、筆選びはますます難しくなっています 。「今日は筆を買うぞ!」と意気込んで画材店に足を運んでも、様々なキャラクターの筆が並ぶ中、目移りばかりし、さまざまな筆との出会いにワクワクし心を躍らせる反面、「筆が良くなったところで絵が良くなるわけでもなし」と、何も買わずに画材店を後にするのは筆者だけではないと思います。

各種メーカーのHPで説明を読んだり、他人の書いたブログを読んだりしても、結局のところ、自分が買うべき1本はなかなか決められず。ですので今回はちょっと強引ですが、「迷うならこの1本!」というのを決めさせていただきました。今後それを超える筆が出てきましたら、またレビューさせていただきます^^

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