前回は「写真模写」をする際の写真撮影についてお話をさせていただきました。今回はいよいよ実践編です。
デッサンの勉強として「写真模写」はトレーニングの初期段階でよく行われています。なぜ初期段階で行われるのかというと、いくつかの理由はありますが、まずは鉛筆の調子やタッチを習得するのにとても良い勉強になるからです。デッサンを始めたばかりの頃は、形を捉えることもそうですが、鉛筆の調子(諧調とか、トーンとも言います、つまり鉛筆の<明るさ・暗さ>のグラデーションのこと)が単調になりがちです。
実際どのような調子の幅があるのか確認してみましょう。前回の写真を使用して、写真の頭蓋骨の部分から調子をパソコン上で抜き出してみました。
鉛筆の調子が異なりそうな部分を8箇所ピックアップし、それを並び替えてみたらなかなか良い感じに8色のグラデーションになりました。写真模写をするということは、この8色が鉛筆で作れるようになるということでもあります。
本ブログを書いている私もデッサンを始めた頃には「10個並べたマス目に10段階のグラデーションを作ってきなさい」という宿題を出されたことを懐かしく思い出します。
この課題地味に難しいです。 マスの中には均一の調子を作り、隣との差を微妙に付けていく。当時はこれを木炭でやったので…完成できなかったと記憶しています^^;
これだけの諧調を作るには、
- 鉛筆の固さの選定
- 筆圧のコントロール
が必要です。鉛筆の固さを使い分ける、というと単純にB〜10Bの鉛筆を塗っていけばできるのでは?という声が聞こえて来そうな気もしますが、それでは作れません。鉛筆の硬さの使い分けも重要ですが、それ以上に筆圧のコントロールが重要です 。 不用意に描くとあっという間に明るい部分が暗くなってしまったり、初めから力をかけてしまうと紙の目が潰れてしまい、鉛筆が乗りにくくなります。また、均一の調子するために「こする」という手もありますが、やり方を間違えると汚くなりがちです^^;
このように鉛筆をコントロールできるようになるには経験が必要なのですが(失敗してこその経験です!^^)、そのために「写真模写」の課題は非常に有効です。トレース(輪郭的な形をあらかじめ線描などで写しておく)しておけば、形を捉えるところでまごつくこともなく、調子を再現することに集中できます。1枚しっかりやり終えることができれば、デッサンの様々な場面でどの固さの鉛筆を使えば良いか、また筆圧はどのぐらいかければ良いかなど掴めるようになってくるでしょう。
今回の授業で完成した作品を1枚ご紹介します。
デッサンの経験1年ほど?の方に挑戦していただきました。頭蓋骨部分、前回の記事でお話しした「光のエリア」と「陰影のエリア」がきちんと掴めています。また、背景の調子の変化もうまく表現できています。頭蓋骨の正面側と壁の間に輪郭線が残ってしまったのがやや悔やまれます。境界線ではなく調子と調子のぶつかりで形が見えるとさらに自然になったでしょう。
写真模写は鉛筆をコントロールする力を養うのにとても効果的です。鉛筆の使い方が今ひとつだな?とお考えの方は一度試されても良いかもしれません。一方、形をとらえる力は写真模写では養えないので、こちらはやはり普通のデッサン やクロッキーなどで養っていきましょう。