風景画を描きたい、スケッチをしたい、柔らかい色調でさらっと描きたい。大人の絵画教室ではよく聞かれる声です。水彩画はデッサンに次いで大人の方が学びたい技法、第2位にランキングするかもしれません。
まずは5つの用具を揃えよう
水彩画を始めるには、下記の5つの用具をがあればはじめられます。用具が少なくて済むのが水彩画の利点でもあります。
- 絵の具
- 筆
- 紙
- 筆洗
- ウエス(ボロ布など)
まずは絵の具を購入しないことには始まりませんので、今回は絵の具選びのポイントをお伝えしたいと思います。
じつは種類が豊富な水彩絵の具
その前に、絵の具選びを間違えないよう、水彩絵の具の種類について簡単に説明しましょう。
一口に水彩絵の具といっても、
- 透明水彩絵の具
- 不透明水彩絵の具(ガッシュ)
- 児童用水彩
といくつかの絵具があります。
水で溶いて描く、という意味ではアクリル絵の具も水彩絵の具の仲間になるのですが、ちょっとややこしい話になりますのでここでは割愛します。
水彩画といったらだいたい透明水彩
一般に大人の方が「水彩画を描きたい」とおっしゃる場合は❶の透明水彩絵の具を指しています。パレットに絵具がすでに入っていて、固まった状態のものを水で薄く溶かしながら使うイメージの水彩です。ほんの少しの絵具で描けるので、小さなパレットでも十分、携帯性に優れ、スケッチなどにもよく使用されています。
描きたい絵のスタイルよって絵の具を選ぶ
❷の不透明水彩はガッシュとも呼ばれますが、あまり馴染みがないかもしれません。チューブからそのまま絵の具を出して使い、透明水彩のようにフワッと紙の色が透けるように色を置くのではなく、紙をしっかりと覆い隠すよう、濃厚に絵の具を使います。(この「透明」「不透明」という話はやや難しいので、その話はまた次回にさせていただこうと思います)なお、ガッシュにはアラビアゴムをバインダー(糊材)とした「ガッシュ」とアクリル樹脂をバインダーとした「アクリルガッシュ」があり、後者は乾くと耐水性になるという性質があります。もし購入される場合は、その違いも押さえておきましょう。
ガッシュを使った美しい絵、というと真っ先に「エミール・ノルデ(1867〜1956 独)」を思い浮かべます。(ノルデの作品はまだパブリックドメインになっていない可能性がありますので、画像を掲載するのは差し控えます。とても美しい絵ですので、是非ご自身で検索してみてください。)
ごく稀に、絵の具なら「家にあります」と❸の、小学生が使っている水彩絵の具をお持ちになる方がいらっしゃるのですが、あれはまた種類が違う絵の具なので注意してください。不透明でガッシュに近い見栄えですが、児童が使うことを前提に、「安全」「安価」という視点に立って作られていおり、「質」という点においては重点がおかれておらず、やや濁りのある色調となっています。
透明水彩、絵具は何を揃えればいい?
では、水彩絵の具を選ぶポイントをお話ししていきましょう。
チューブか固形水彩か?
透明水彩絵の具にはチューブと固形水彩と2種類の売られ方があります。
チューブ絵の具
チューブ絵具を買う場合は、一緒にパレットを購入し、下記のようにパレットに絵具を詰め、乾燥させた状態で使用します。自分で絵具をパレットに詰める手間がかかりますが、画面にたっぷり塗ることが多い、という方はこちらの方式がおすすめです。
固形水彩
固形水彩は、上記のようなブロック状の絵具がパレットに収まった状態で売られています。自分で絵具を詰める手間がないのですぐ使うことができ、また、比較的コンパクトなので、スケッチなど野外で使用するのにも便利です。ただ、パレットが小さいため、絵具を混色するスペースが小さいところが難点です。
では、チューブか固形か、どちらを選べば良いでしょうか?
基本的にはどちらを選んでいただいても構いません。敢えていうならば、チューブは大きめな作品、例えば8号以上のサイズで描きたい、という場合はチューブの方が使い勝手が良いでしょう。混色するスペースが大きめで、たっぷりと絵の具を解くことができます。スケッチなど、携帯性を求められる方は固形が良いかもしれません。
ブランド(メーカー)は?
画材専門店で「透明水彩」と書かれているものであれば基本的には大丈夫です。
透明水彩絵の具というのは、1枚描くのにびっくりするぐらいちょっとの絵具で描けます。油絵に比べればほとんど減りません。一度購入して教室で描くだけでしたら、1〜2年は余裕で保つのではないでしょうか。そのぐらい長持ちするので、良いものを買っていただいて損はないと思います。
教室で生徒さんがよく使用しているメーカーは下記の通りです。
24色で国産なら5,000円前後で揃えられます。輸入品はこれよりもだいぶ価格が高めですが、先にも書いたようにかなり長持ちしますので、予算に合わせて好きなものを購入されると良いでしょう。
12色〜24色あればOK
画材店をのぞくと、色とりどりにきれいな絵具があり、いろんな色を使ってみたくなりますが、まずは24色あれば十分です。色の名前を覚え、使いこなすのはなかなか難しいものです。24色というのはだいたい基本色で構成されていますから、24色からスタートして必要に応じて使いたい色を購入していけば良いでしょう。
慣れてくると混色が上手くなって、12色もいらないという人も出てきます。究極には水彩は3原色あれば、かなりの色が再現できますが、このお話はまた別の機会に。
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