2学期末実技模試の結果

こんにちは。
高1生・高2生科の講師の村です。

今回は、先週に引き続き2学期末の実技模試についてお伝えします。

全クラス合同で行われる作品講評会では、優れた作品を選定し優劣をつけて結果を発表します。作品に優劣がつくのは厳しくもありますが、いずれ入試で作品に評価がくだされ点数がつきます。合否も分かれます。「みんな違ってみんな良い」というわけにはいかないのです。

今回作品が高く評価してもらえた人は、日頃の成果を入試本番でも発揮できる可能性があります。ですから大いに喜んで欲しいと思います。ここぞというシーンで実力が出せるというのは、誰にでもできることじゃありません。自信に繋げてください◎

逆に低く評価された人は、これを「もうひと伸びするための機会」だと思いましょう。僕はスイスイと順調に壁にぶつかることもなく上手くなっていく人というのは危ないと思っています。なぜなら本番で想定外のことが起こったときに何も対処できないからです。だからミスをした経験があるのは大事なことで、対処の方法を知ることに繋がるわけですから、実はお得なのです。

では、今回の課題の上位作品をご紹介していきます。

デザイン工芸・日本画・油画基礎コース(週4日クラス)
出題:「セットされた静物を描きなさい」

【第1位】デザイン工芸基礎コース
たっぷりとして大きな空間が魅力的な作品です。複雑にうねるような形の流木は、色々な場所にちいさな「間」を作り出します。この作品は、その「間」も含めて流木を描こうとしている点が優れています。ただし、このモチーフをこの場所から描くのはちょっと難しすぎます。流木の裏側がどうなっているかを人に分からせるためにはヒントが少なすぎるのです。別の角度、別の視点を選ぶことで解消できる問題があるので、今後は注意が必要です。

【第2位】デザイン工芸基礎コース
完成度の高い作品です。一つひとつのモチーフが細部まで丁寧に描かれており、その描写レベルは学年でもトップクラスだと思います。それぞれの質感の違い(金属のツルツル、流木のザラザラなど)も良く表現できています。問題は全体的なスケールの小ささです。1位の作品と比べると、どのモチーフも若干小ぶりに見えてしまい、流木のどっしりとした重さも半減しています。床に落ちる影の描写の単調さも改善する必要がありそうです。

【同率第2位】油画基礎コース
流木のスケールの大きさを良く捉えている作品です。鉛筆に比べると、やや扱いの難しい木炭を良く使いこなしています。画面右下、手斧(ちょうな)の持ち手部分とその周りの「間」を広く取ったあたりは、光と影の印象も含め美しく描けています。残念なのは、画面全体に暗いフィルターがかかっているかのように、調子が被って見えてしまっていることです。制作時間が長いと、逆に絵の鮮度が失われてしまうので、もう一度鮮明なイメージを取り戻す仕事をしたいところです。

【同率第2位】油画基礎コース
背景の扱いが魅力的な作品です。アトリエの風景の一部を積極的に絵に利用しています。もしこの背景がなかったら、右上に大きな間が空いてしまい、構図が悪く見えてしまったことでしょう。一方で、メインである台上のモチーフには積極性がいささか足りないように思えてしまいます。流木を小ぶりに描いたことで、それを取り巻く他のモチーフのサイズもつられて小さく見えます。改めて静物描写を研究したいところです。

デッサンコース(週1〜3日クラス)
出題:「任意の箱を持った手を描きなさい」

【第1位】
インパクトのある作品です。そして学年全体の中で、もっとも自然な印象の手を描いていました。このようにいい具合に力の抜けた、リラックスした手を描くのは意外と難しいものです。今後たくさんクロッキーの練習を重ねることで、様々なポースの手が描けるようになるでしょう。一方、「箱」に関しての答え方はやや消極的。サイコロキャラメルであれば、紙の箱であることをもっと明確に描くべきです。パッケージへの興味を深めていけるといいですね。

【第2位】
手の姿が美しい作品です。指の扱いも一本一本役割があるように思います。箱に限らず、物を持つ手というのはなかなか複雑な形をしています。全部の指を同じように使うことはあまりなく、たいていは使っていない指もあるのです。遊んでいる指を画面の中でどう配置するのかも含めて構図を考えられると、手のデッサンの演出が楽しくなってきますよ。画面左、手首の形はもう少し観察が必要です。別角度から手を見たり、手首を動かしながら見るようにしましょう。

【第3位】
両手を大きく描いているエネルギッシュな作品です。今回の課題は、片手を描くか両手を描くかは特に定めていませんが、両手であれば持ち方のバリエーションも片手よりぐっと増えてきますね。作者が今回選んだのはルービックキューブ。「箱」とはまた少し違いますが、しかしながら今後の課題に応用が効くような要素が詰まっていると思います。手のハリのある部分の描写はとても良いので、次は皮膚のたるんだ部分や、シワの起きる部分を良く見るようにしましょう。

【同率第3位】
空気がすっきりと晴れていて、色が美しい作品です。何となく箱を持つというのではなく、ふたを開ける動作をプラスしているのが良いですね。このように具体的な動作を設定することで手は生き生きして見えてきます。この作者の箱が一番「箱」らしいですが、一体何の箱なのか、まだまだツッコミ所はありそうです。紙の厚み、紙の材質に設定があれば見ていてもっと楽しいし、中身を想像させるようにちらっと箱の口から何かが見えていても良かったかもしれませんね。

これにて2学期は終了です。
みなさん、お疲れ様でした!
この後は冬期講習会が待っています。描写力をもっと伸ばすべく頑張っていきましょう^^