横浜美術学院監修 美術用語辞典

横浜美術学院が独自に編集した美術用語辞典です。美術に関わっていく人に最低限知っておいてもらいたい用語を中心に編集しました。何かの機会に耳にした言葉の意味が分からないときに、活用して下さい。なお、人名に関しては全て削除しました。知らない画家の名前などに出くわした時は、必ず自分で画集を探して確認して下さい。

は〜ほ

パース

パースペクティヴの略。二次元空間に三次元空間を感じさせる表現方法のひとつで、線遠近法を指す。近くにあるものより遠くにあるものが小さく見えるということ、平行する線は遠くで出会うように見えるということから考えられたもので、15世紀フィレンツェの建築家ブルネレスキによって最初に用いられたといわれている。転じて、その方法で描かれた建築の完成予想図などを指す場合もある

バウハウス

第一次大戦終了後に美術・デザイン・建築の教育機関として建築家のグロピウスが校長になって設立された。教育理念の背景には、アーツ・アンド・クラフツがある。クレー、カンジンスキー、イッテンなど優れた作家が教授陣を構成し、家具、住宅、舞台美術、絵画、写真、金工、グラフィックなどを含む総合芸術の実験場として機能した。二十世紀前半のもっとも重要な美術教育の場となったが、ナチスの台頭によって閉鎖された。

ハッチング

細い平行線を交差させ、その多少によって濃淡を作っていく技法で、線影とも言う。細い筆と白の絵の具を用いてハイライト部分の量感を作るときにも用いる。ルネッサンス期の期画やテンペラ画から広く行われるようになった。

パステル

乾性の絵の具の一種で、顔料に炭酸カルシウム、白土などを加えた粉末をアラビアゴムなどで練り固めて棒状にしたもの。油性のものとそうでないもの、ハードなものとソフトなものなど様々な種類があり、用法も異なる。

パピエ・コレ

コラージュアッサンブラージュなどの技法の最初のきっかけになった試み。絵の具の代わりに楽譜や包み紙などの紙を画面に糊付けし、絵の具とは異なる質感を利用したり、糊付けされた紙のフラットな色面を生かしたりした。マチスの切り絵の作品はその代表的なものである。

パフォーマンス

芸術家による何らかの身体表現の総称であるが、しばしば前衛表現の最前線の役割を担ってきた。それぞれの時代によって呼び名は異なり、目的や問題意識も異なるが、「生きた芸術」としてダダイズムシュールレアリズムバウハウスなどで盛んに行われ、戦後は「ハプニング」として表現者と観衆の区分の解消が図られ、やがて「イベント」と呼ばれて偶然性を重視した行為となって、やがて総括して「パフォーマンス」と呼ばれるようになった。

バルール

フランス語で、色価と訳す。色と色との相関関係から生まれる色彩効果のことで、相対的な色の濃淡や明暗などのつり合いが取れていないときに、バルールが狂っているという言い方をする。絵画では、相対的な色の関係が画面の中に空間を生んでいく作用をするので、自分が欲している空間にするためには、常にバルールに注意を払って選ばれなくてはならない。

パンドル

描画用ワニスのことで、ダンマル樹脂を揮発性の油であるペトロールで溶かし、しっかりとろ過精製したものにポピーオイルを加えたもの。透明性や粘り、つやなどをもたらし、絵の具の固着力を強め、乾燥を早める効果があるが、短時間で加筆しやすくするために、予備校では速乾剤として用いられるケースもある。

表現主義

自然の写実的な再現よりも、表現者の内面の感情の表出を重視する芸術のスタイル。二十世紀初頭のドイツに生まれ、以後世界的な規模で大きな影響力を持った芸術運動。印象派によって始められた再現性の放棄は、ゴーギャン、ゴッホ、アンソール、ムンクなどを表現主義的画家の先駆者として、やがて抽象表現を生んだ。美術にとどまらず、二十世紀全般にわたって、映画、演劇、建築、文学、音楽などジャンルを超えて広がりを見せた。

ファインアート

純粋芸術と訳されているが、一般に装飾的な美術と区別してこのように呼ぶことがあり、また、商業美術と区別して呼ぶこともある。いずれにしても、純文学と大衆文学と区別するのと同じように、一方と他方のクオリティーの優劣を意識させるようなニュアンスがかすかに感じられ、概念としてはさして重要とは思えない概念である。

風景

一般的には光景とか景色の意味を持ち、伝統的な絵画ではそうしたものをモチーフに描いたものを風景画と呼んでいる。静物や人物などを、外側から見て描く事が絵画の自然なありようだとする価値観が、二十世紀初頭の画家達によってすでに解体され、眼差しが人の内面やものの存在そのものに向けられている以上、風景だけが眺められるもののままであり続けるはずはない。美術において今や風景は、人間存在そのものも内包する場として意識され、多様な切り口で表現される対象となっている。

フォービズム

表現主義的絵画の中の一部を示すネーミングで、たまたま批評家の発した言葉の中に野獣という言葉が入っていたのを、表現の荒々しさや激しさを表すものとしてネーミングに使用したもの。二十世紀前半の、伝統的な芸術の価値観が一気に揺さぶられた時期には、芸術運動や必ずしも運動体とは言えないグループに対してさえも、実に様々なネーミングがなされた。従って、一人の画家がシュールレアリストであり、キュビストであり、ダダイズムの画家であるという奇妙なことが十分あり得るのである。

フォトリアル

美術予備校以外ではあまり使われない言葉。対象を正確に画面上で再現する描写力を付けさせるためのトレーニングのひとつで、実際の物体を対象にすると、物体の持つ三次元空間の構築が必要で、少なくとも次元の違いが予期せぬ障害を引き起こす場合がある。写真をモチーフにすると、平面から平面への再現となるため、問題を絞り込み易い。そのため、写真を鉛筆や絵の具を使ってリアルに描写する課題が考えられ、それをフォトリアルと呼んだ。

不透明水彩

アラビアゴムを媒材として不透明な顔料を混合した絵の具。透明水彩では、基底材の紙の白さを利用して明度を高くするのに対して、不透明水彩では絵の具のホワイトを混ぜて明度を上げる。ポスターカラーは、この不透明水彩の一種で、最近は、アラビアゴムの代わりにアクリルを混ぜた、アクリルグァッシュという絵の具が、多く使われている。

ブランディング

ブランド作り(Brand making)の意の和製英語。hamabiでは、デザインコースで、製品のブランドを作ることを想定して、アイデアのプレゼンテーションをする授業で使われたりする。

フルクサス

1960年代の初め頃から、ニューヨークを中心にケルン、コペンハーゲンなど欧米各地で展開された「ハプニング」もしくは「イベント」といった身体表現を行ったグループ。様々なジャンルの芸術家が参加して、ジャンルを超えた新たな芸術的遭遇をもくろんだり、日常の空間をそのまま芸術表現の場に変えようとしたり、偶像的・制度的な意味の総体に疑問を投げかけた。60年代の反芸術運動の先駆けと言って良い。

フレスコ画

アフレスコとも言う。新鮮なという意味のイタリア語で、漆喰を壁に塗り、それの乾かないうちに水性の絵の具で直に絵を描く。石灰の層の中に絵の具が染み込んでいき、漆喰は乾燥が始まると表面に固い透明な皮膜ができるために、それが絵の保護層となって非常に堅牢な画面となる。漆喰が濡れているうちに全て描いてしまわなければならないため、あらかじめその時間内に描ける部分の面積を割り出して下地を作らなければならない。

プレゼンテーション

提示、発表の意味。通常略してプレゼンと言う。本来は広告会社が広告主に対して行う宣伝計画の提示を意味したが、転じて、研究発表とか、様々な計画案の発表もプレゼンと呼ぶようになった。相手に好感を持って受け入れてもらえるように、情報を整理して見易く整え、他のプランに勝る点やポイントになる事柄を的確に伝える工夫が必要。以前は、書類やパネルでアピールすることが多かったが、最近は、パワーポイントといったプレゼン用のパソコンソフトを用いて、プロジェクターで拡大表示するというケースが多い。

フロッタージュ

表面の荒れた物質に紙を乗せて、その上を鉛筆など固い描画材で擦って意外なイメージイメージや模様を得る方法。エルンストがこの技法を多用している。同様な技法は、例えば石碑に刻まれた文字を保存解読するために用いられたりして、美術以外の分野では古くから使われていた。

プロダクト

製品デザイン。工業デザインの分野も様々な呼称で呼ばれているが、インダストリアルデザインとかプロダクトデザインとか呼ばれるものは、工業製品のデザインである。多くは、日常生活の中で使用される消費材としての工業製品のデザインを示しているが、概念的にはロケットやジェット機などもこれに含まれる。

平面構成

色彩構成の項参照。

ペトロール

テレピンと同じ揮発性の油だが、テレピンが植物由来であるのに対して、ペトロールは石油から抽出されたものである。樹脂や油脂を溶解する力はやや弱く、一部のワニスを白濁させてしまう性質を持っている。

ポートフォリオ

紙挟みや折りカバンの意味で、本来は投資信託や金融機関など機関投資家の所有有価証券の一覧のこと。転じて資料をまとめて一覧できるように整理したものを指すようになった。美術大学の入学試験も、最近は自己推薦形式の試験が増えてきたこともあって、提出する作品資料やその他の資料をまとめたものを、こう呼ぶこともあるようだ。

ポップ・アート

まさに戦後アメリカの象徴のようなポップアートだが、実は1950年代のイギリス生まれである。しかし、マスメディアによって日々生産・消費される大衆文化、つまり、広告、マンガ、女優の写真、加工された食品類、注目を集める政治家の顔などを、そのまま作品として提示したポップアートは、まさにアメリカのために産み落とされた芸術表現であった。

ポピーオイル

油絵の具の媒材のひとつで、乾性油と呼ばれる植物由来の油。ポピーオイルは、ケシの実から採取して精製した油で、固着性に優れており、テレピン油と混合して溶き油として用いる。適度な艶があるが速乾性ではなく、完全に乾燥して固化する迄にはかなり時間が必要である。

ホログラフ

立体画像への強い願望は、様々な技術革新をもたらしているが、このホログラフもそのひとつ。物体にレーザー光線を当て、そこから得られた反射光ともとの光との干渉パターンを感光材料に記録し、これに別の光を当てて三次元の像を再生する仕組み。今のところは芸術表現の媒体というよりは、先端科学の域にとどまっている感が強い。